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某ネズミの国でお揃いの物を 9

各種絶叫マシンを乗り回すため、遼介は優先入場券を買いに行ってしまった。 鼓はカフェデッキのパラソルの下、大人しく待つことにする。 (なんでもかんでも遼介が払うから複雑…俺だって払えるのに。バイトだってしてるのに) 遼介には特に何も伝えていないが、家からの仕送りなどない鼓は1ヶ月に数度、食堂でアルバイトをしている。 鼓の居る時だけはメニューが豪華になり、鼓がアルバイトをしていると知らない人たちはその日を“褒美の日”と勝手に名付けていた。 それはともかくとして、遼介に言っていない理由は「遼介なら既に知っているだろう」と思ったからだ。 実質、遼介はアルバイトのことは知っていた。 ここで当たり前と感じてしまうのは、もう末期だからか。 (何か頼もうかな) カフェなだけあっていい香りが漂ってきている。 (遼介の分も頼めばいいんだし、ちょっとくらい俺も役立ちたいからいいよね。別にお腹減ってるとかじゃない、そういうのじゃない) 誰に何に対して言い訳しているのか、鼓は言い聞かせるようにしながら立ち上がった。 メニューが豊富なので、表の前で全部頼むか迷っていたところ。 片側に誰かが隣に来るのを感じる。 遼介だとなんの根拠もなく思った鼓は普通に隣を見て 固まった。 「ハジメマシテ?」 アッシュブロンドの髪、薄い緑の瞳、高い鼻と薄い唇は外国人ならではのものだった。 隣にいたのは、遼介ではなかったのだ。 「へ、あ」 的が外れて思いっきり慌てふためく。 (だ、誰?!) 「エーット、キミ、カワイイネ?」 (ナンパ?!) ぐいぐいと来られ冷静に判断が出来なくなる。ついでに手も握られて、強制握手。 「ヨカタラ、イッショニ、ゴハンタベナイ?」 カタコトながらも必死に(?)食事に誘おうとする姿はどう考えてもナンパである。 こんな姿を見れば誰だって多少は絆されるものだが、鼓には更に上をゆくスパダリがいるのだ。 そう簡単には、。 「あ、はい?ご飯?」 「オススメ、トカ、オイシイタベカた、オシエルよ」 「…………」 靡かない、はずだ。

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