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某ネズミの国でお揃いの物を 10
『どう?一緒に食べない?』
流暢な英語でそう聞かれ、いつまでも待たせているのは失礼だと思い鼓も英語で返す。
『えっと…今日友達と来てるから』
『あ、本当?…………じゃあ君の友達と一緒に食べよう!きっと楽しいよ!』
『う、うーん……』
『お願い!君と一緒に食べたいんだ!』
あまりに何度も誘われるがそこで折れる訳にはいかなかった。
今日は「デート」をしに来ているのだ、言い方はきついが、他が入ることなど鼓も遼介も望んでいない。
先程は少し靡いたが。
『ごめんなさい』
『どうして?もしかして本当はデートだったりする?』
咄嗟に、だがバレない程度に微笑みながらゆっくり首を振った。
(ここでデートだとバレてタイミング悪く遼介来たらまずい)
『違います』
『君の彼女は可愛いだろうね。見てみたいよ』
(おいこら話を聞けイケメン外国人、いやナンパ野郎)
何故自分の周りのイケメン(鷲野も認めたくはないが顔が整った方だ)は人の話をまともに聞くことも出来ないのか、とため息が零れ落ちる。
彼女ではないですと言うと、今度は彼氏?と聞かれヒクリと鼓の頬が痙攣した。
(根掘り葉掘り聞いてき過ぎ。面倒臭い。仕方が無いしカフェから出よう)
遼介には電話で事情を説明すればいい。壁掛けのメニュー表から離れた時、腕を掴まれ鼓の体が傾いた。
慌てて振り返ると今度は真剣な表情で待ってと言われる。
『気分を悪くさせたなら謝るよ。でも、』
その後ろに、大きい影。
「あ、」
『すみません』
(これ、もしかしなくても怒ってる?)
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