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某ネズミの国でお揃いの物を 18
(え、演出?違う、他のゴンドラの人も戸惑ってる…何かトラブルが起きたんだ)
「止まっちゃったね」
「ですね…アナウンスかかると思うんですけど、流石にびっくりしました」
「直るまで景色見て楽しむしかないね。ちょうど俺たちが一番上の時に止まったっぽいし」
シースルーの床を指差し遼介が言う。下を向いた鼓はぱぁと顔を明るくさせ喜んだ。
「ほんとですね!」
思わず立ち上がり辺りを見回していると、どさくさに紛れて遼介が手を引いて鼓を膝の上に乗せた。
ゴンドラが揺れて、鼓が小さく叫ぶ。
「きゃ、」
「何今の声、可愛い」
「ふ、不可抗力!」
「ああ、可愛いなぁつーくんは。可愛いし可愛い、可愛い所しかない。もう愛おしいよね。愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い愛おしい可愛い……」
「遼介、読者がゲシュタルト崩壊するからやめましょう?」
「……………………………つーくんもメタい発言やめよう?」
少しするとゴンドラ内の蛍光灯も消えてしまい、これは完全に故障だと言い合う。
暫くするとやはり故障だというアナウンスが流れ、待てば直るらしいが修復作業が終わる時間は分からないようだ。
「時間掛かるでしょうか」
「そうかもしれないね。その分俺は今日一日分のイチャイチャを楽しむのみ」
「ちょ、ちょっと!!、ッア」
首元をカプリと甘噛み。そのまま舌で耳まで伝い、耳も甘噛みする。
嫌だと身動ぎするもしっかりと抱きとめられているせいで逃げ出せない。それどころか、ゴンドラ内のため最初から逃げ場などない。
鼓はせめてもの抵抗で手で口を塞いで甘ったるい声を遮断した。
「ふんっ」
「へ、ふぁにそのこうろうかわふぃふぃ(え、なにその行動可愛い)」
(……無駄な抵抗だったか)
スンと鼓は悟りを開いたかのように大人しくなった。
「電気消えると、なんか幻想的だね」
「……はい」
観覧車だけの電気が消えているようで、他は全く変わらない。それどころかだんだん暗くなってきたことによって昼間とはまた違う景色を2人の目に映し出していた。
(ああああ、また寂しくなってきた。意味わかんない、なんでこんな寂しくなるの?)
何故か泣きそうになり唇を軽く噛む。
「ダメだよそんなことしちゃ」
どうして気づいたのかは分からないが、直ぐに遼介は鼓の口に指を入れ噛むのを辞めさせた。
その代わり自分の指を噛めと言う。
少々戸惑った後、鼓は遼介の指を噛んだ。
「それで、つーくんの悩みは何かな」
「ひゃんか、ひゃみひいれふ……」
「なんか、寂しいんだ。そっか、どうしようね」
(…今の分かったんだ、凄い)
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