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幸せの絶頂期 1
[恐怖編]
「……つーくん口開けて?」
「ここじゃ……いや」
「なんで?いつもしてくれてるのに」
「だって、恥ずかしい…っ」
「お願い、つーくん…ほら、おくち、あーけーて?」
「ッ……もう」
「ふふ、いい子だね」
「誤解されるような発言はおやめ下さいます?!?!」
ツッコミを入れたのは詩帆である。そうするのも無理はない、ここは鼓の教室なのだ。
先程の会話はエロティックな会話ではなく、ただ単にバカップルがやるような「あ〜ん」をやっていただけだ。
なんとも紛らわしい2人である。
「誤解されるって、それは詩帆が勝手に変な想像してるだけだろ。俺たちは別に厭らしいことなんてしてない。ね?つーくん」
名前を呼ぶ時だけうっとりとするような声音になり、鼓も蕩けるように目を瞑った。
が、次の瞬間目を開けて遼介を下からジロリと見上げた。ちなみに鼓は今、遼介の膝の上に横抱きで座らされている。
「でも、ここであーんは本当に嫌です」
「ええ〜、生徒会室ではやってくれるのに〜」
「ッ、ネタで終わらせようと思ってたのに!なんで暴露するんですか!!」
クラス全員「(生徒会室ではしてるのか)」
クラス全員が生唾を飲み込んだ。今の会話だけでお腹いっぱいだというのに、生徒会室ではもっと凄いことが行われているのかもしれない……と。
「しょうがないじゃん、生徒会室の鍵が行方不明なんだから」
そう、遼介がここでお昼を食べている理由。それは、生徒会室の鍵が行方不明だからである。
生徒会室には個人情報等々も保管されており、それによって鍵は特に厳重に保管されているのだ。
だというのに、つい数日前のこと。生徒会室の鍵が無くなってしまっていたのだ。先生含め生徒会役員には全く心当たりなどなく、現在も捜索中なのである。
「どこいったんでしょうか、鍵さん」
(カギさん?!可愛いすぎる。録音してて良かった)
遼介の胸ポケットのボイスレコーダーはしっかりと今の音を録音していたようである。
「でもね、つーくん。俺だって本当は嫌なんだよ?こんなに可愛いつーくんの姿をみんなに見せなきゃいけないんだから。とっても悔しいんだよ。
それにこんなこと言いたくないけどつーくんの声もみんなには聞かせたくないし姿だって俺だけが眺めていたいし匂いだって嗅がせたくない。つーくんは俺のものなのにどうして周りはそれを許してくれないんだろうね全くもって腹立たしい限りだよ。
あ、そう言えばつーくん最近便の出が悪いよね大丈夫?製薬会社の知り合いがいるから便秘薬ならあげるよ。非刺激性のほうがいいー、」
「遼介、ストップ、ストップ!!」
どうしてこのストーカーは鼓の便秘事情まで知っているのだろうか、いや、ストーカーだからこそだろう。
鼓も流石に嫌がるはずだ。
「恥ずかしいので、辞めてください…っ」
『こ、怖いのでやめてください』と予想していたのだが、やはりそこは鼓であった。
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