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幸せの絶頂期 4

昼食後、遼介たち生徒会役員は先生に呼び出された。鍵が見つかるまで、生徒会は休みになるとのことだった。 『あと、氷川。涼川の役員名が「生徒会長癒し係」…?になってるんだが、なんだこれは?』 『すみません、それ「氷川 遼介の癒し係」に変更しておいて下さい』 『………………わ、かった?』 “氷川”だけあって、教師も兎や角言えないようだったが、鼓はそんな教師の態度に心の中で毒づいていた。 帰れるようになることは、遼介にとっては嬉しいことであり、鼓にとっては安心出来ることだった。 実はと言うと、鼓は生徒会には入ったのだがここ最近生徒会には行っていないのだ。 理由は、”鼓を付けている人物がいるから“ 現在、八九座が辺りを警備中であり下校は八九座と共にしている。 真っ先に気づいたのは鼓だった。だが、それを隠したのも鼓だ。 ほぼ毎日誰かの視線を感じており、だが何もしてこないことが不気味だったと言う。 今までは何かしら動きを見せていた嫌がらせやイジメの犯人では無いことに気づき、まずいと思い始めていたのだ。 もちろん、遼介が気づいた時、隠したことについてみっちりお叱りを受けた。正座で1時間ほど。 鼓も不安に思っていた節もあり、一緒に帰れるのは嬉しいことなのだ。 「今度隠したら、テディベア取り上げるよ」 「善処します」 即答した。 手を繋いで帰りながら(詩帆は叫んで逃げて行った)、辺りを警戒する。鼓も一応は警戒しているものの遼介と一緒なので油断している部分もあった。 「今日の夜ご飯は何?」 「カルボナーラと和風パスタとキノコとほうれん草のパスタです。あとコンソメスープ」 「……ん?!パスタ3種類も作るの?!多くない?!スープもあるの?!」 「少ないかなって思って……」 もうすぐ寮の近くという所で、それは起こる。 「ッ!!!」 グィッと遼介が突然腕を引き、鼓を抱きしめた。いきなりの事に鼓は目を瞬かせる。 「遼、」 途端、大きな音を立てて何かが割れ周囲に飛び散った。白い破片と、大量の水。それから、花々。 ー……花瓶だ。 遼介が上を見ると黒い影がサッと動き逃げていく様が見えた。作為的な行動だと瞬時に判断する。 傍に控えていた八九座が飛び出し階段を駆け上がった。 手を繋いでいたことで難を逃れたが、それでも気づくのが一歩遅ければ死は免れなかっただろう。 こんなものが頭に落ちれば……考えただけでもゾッとする。 「つーくん大丈」 遼介は最後まで言葉を発することができなかった。 「鼓?」 鼓が、初めて涙を見せたからだ。

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