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鼓は何も悪くない 1
遼介は視線を諸共しない。それどころか、遼介は鼓を横抱きにしてうろうろと教室内を歩き出した。
はた迷惑である。
「このままつーくんと授業サボりたい」
「俺の皆勤賞どうしてくれますか」
「…………先生と要相談」
「遼介、それは“コネを使う“って言うんですよ、知ってます?」
ぐっ、と遼介が押し黙った。鼓が権力を嫌いとしているので強く出れないのだ。
というより、何故運ばれているというのに嫌がらない?
〜♪
「!ほらもう、降ろしてください!授業始まります!あと、今日は別々に帰りますから」
予鈴が鳴り、ジタバタと暴れ出す。別々に帰ると言われた遼介は当たり前だが了承することは無い。
「つーくんがちゃんと俺と一緒に居てくれるなら降ろすよ」
そう条件を出され、鼓は必然的に目を逸らした。
(俺だって一緒居たいけど…でも、そんなことしてまた遼介が怪我したら……)
無言を貫き通していると、深い深いため息がつかれた。肩にのしかかる程のため息の重さに大きく体をびくつかせた。
呆れていると、思っていたのだ。嫌がりすぎてとうとう愛想を尽かされたのかと。
(でも、でもこれ以外に遼介を守る方法思いつかない…じゃあどうすればいいの、)
涙腺が緩みきってしまったのか、涙目で彼は遼介を見上げた。どんな視線を向けられても受け止める覚悟をして。
しかし、それは全くの逆だった。
遼介は愛おしそうに鼓を見ていた。仕方ないなぁと心底溺愛している顔つきに、目を丸くする。
「つーくんは、何も悪くないんだよ?」
「!」
「そういや俺、涼川からなんにも聞かずに先輩連れてきちゃったんですけど、あの二人どうしたんですか?」
「あ〜、鼓くんがつけられてるって話は聞いた?」
「はい、それは聞きました」
「昨日とうとう犯人が動き出してね。寮の窓から花瓶が落ちてきて、遼介が怪我しちゃったの。大きい怪我じゃなかったんだけどね〜」
「それで涼川は離れとこうという結論に至ったと。なるほど、涼川らしいですね。にしてもその展開萌えますね、いい迷惑ですけど」
「?犯人燃やすの?」
「発想が物騒な方向に飛んで行った?!燃やしませんよ!」
「え、なんで?」
「なんで、って……ええー、」
「そこのモブ、うるさい」
コソコソ耳打ちをし合う二人を遼介は一刀両断にした。先程は鼓を腕に突っ込ませてくれて有難かったが、今の会話で全てチャラになってしまったのだった。
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