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鼓は何も悪くない 2
「癪に障るけど、あの2人が言うとおり燃やされるべきは犯人なんだから。つーくんは悪くないんだよ?」
(多分、古木が言いたかったのは”萌え“の方なんだろうけど…)
敢えて聞き逃すこととした。
「そうだ。燃やそう。つーくん、犯人捕まったら俺、燃やすね」
聞き逃せない言葉がさらりと流された。
「え、なんの決意表明……?」
「つーくんと俺に割って入ったことへの報復」
遼介は辺りを何の気なしに見回したが。それがまるで犯人を発見次第、容赦しないと威嚇しているように見え、各々が背筋に冷や汗をかくこととなった。
恐ろしいことこの上ない。誰もが犯人を庇う気など持たないだろう。
「というかいい加減下ろしてください。目立つんで」
「つーくん可愛いよね」
ようやく姫抱っこから優しく椅子に座らされる鼓。落ち着いた様子であるが、どうやってすれば遼介が離れてくれるかを考えている。
未だに、原因は自分だと思っているらしかった。
(また遼介が怪我するなんて、そんなの見たくない)
「……鼓、それ以上その事を考えるなら本気で怒るよ」
ビクッと肩を勢いよく跳ね上がらせる。
顔を即座に上に向けると、いつもの遼介らしからぬ怒気を含んだ表情で鼓を見つめていた。
鼓はそれが本気だと分かり口を引き結んだ。
「鼓は、何もしなくていい。犯人 が悪い。鼓が今考えてることはあっち側思うツボ、そんなこと分からない子じゃないでしょ」
「あ……う、は、い」
跪かれ目を合わせられる。ジロジロと不躾に見られることはあっても、こうして目を合わせて見られることは数少ない。
そのため、鼓は視線をどこに向ければいいのか戸惑っていた。
しかし、手を握られたことで、視線は自然と遼介と合うようになる。
「警備も護衛も強化するし、今回は例外だけど俺も今後は絶対怪我しない。
だから、俺から離れるのは許さない」
「……はい」
古木「(束縛に言葉責め、ヤンデレにほぼプロポーズ。最高、ご馳走様です!)」
詩帆「(これ、喋っちゃダメかな)」
古木「(ダメですよ!これシリアス&絆確かめシーンなんですから!)」
隆盛「(お前ら、静かにしろ)」
「聞こえてるからね?」
遼介が3人を睨みつけた。
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