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絢爛豪華な部屋 6

あえて「変な写真とか」の部分を追求することなく、鼓は今から自室となる部屋を見に行った。 部屋はやはり広く、そして綺麗であった。埃や塵1つない部屋をグルリと見回し、ゆったりとした足取りで備え付けのクローゼットに近寄る。 「……」 開けたが、中には何も無い。 「……はぁ」 かのように見えた。 よくよく見れば端の方に小型カメラが設置されており撮影中のランプが付いていた。気づいたのはマグレか、それとも。 「……遼介」 「あ、やっぱりダメだった?」 いつの間にか背後にいた遼介を見遣る。 「…………現物があるのにどうして盗撮しようとするんですか」 「なんていうか、ストーカー時代の癖でして、ね?」 「癖を治せ、とは言いませんけど…なんか、こう、モヤモヤするって言うか…」 「つーくん、自分の動画とか写真にヤキモチ妬いてる? 、大丈夫だよ安心して。どんなに好きでもやっぱり触れて喋れて愛でると恥ずかしがるつーくんの方が1番いいから。それに「ストップ」」 「もう、もういいです……恥ずかしい」 「そういうところが好き」 こくり、鼓は小さく頷いた。 運び込まれていた荷物を整理しようとした時、遼介がちょっと待って、と声をかけた。 荷物は綺麗にダンボールに入られらている。下着類は遼介がダンボールに入れたらしい。 鼓はそれを聞いていくつか下着が無くなるのでは、と少し不安に思っていた。 声をかけた遼介は取ってくるものがあるからと自室へ引っ込んだ。開けた時に見えたが、遼介の部屋も相当広そうである。 「つーくん、これ」 遼介がゴソゴソと自室から引っ張り出してきたもの。 それに鼓は目を剥いた。 「…んで、それっ」 「捨ててあったからだよ。ダメだよ、こんな大事なもの捨てちゃ」 呆然とする鼓に、遼介はそっとソレを手渡そうとする。だが、鼓の身体は完全に強張ってしまい、動きそうにないので、仕方なくダイニングテーブルの上に置いた。 小型の重圧そうな黒いハードケース。 遼介がついこの間見た、ヴァイオリンだった。

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