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絢爛豪華な部屋 9

「遼介って逆上せやすいんですか?」 「……俺の弱点っていうか。熱いの苦手なんだよね」 鼓がにや、と悪戯っ子のような笑みを頬に湛える。嫌な予感がした。 「次からご飯中に出す飲み物はあっつあつのお茶にしますね」 「えっ、酷い」 「ふふ、冗談ですー」 鼓は笑っているものの、遼介は本気で熱々の茶を出されそうで気が気でなかった。鼓は時折、有言実行する男らしい部分があるからだ。 (……すっごく見られてる気がする。これカメラあるよね) 風呂にて、監視カメラの存在を確信した鼓は熱いお茶を出そうと決意した。 そして遼介は食事の際、薄まることを覚悟の上で泣く泣く茶に氷を入れて冷ましていた。 結局遼介の自業自得となったようだ。 「だって、つーくんの裸体が見たくて…」 「裸体言わないでください!!恥ずかしい!」 そろそろ寝ようという話が出て、立ち上がった後。遼介はふと思い出したかのように苦い顔をした。 どうしたのかと問えば、終わっていないがあると言う。 「ごめん、つーくん先に寝てて」 「生徒会の書類なら俺も手伝いま、」 途中で口を閉じた。遼介が困った顔をしたからだ。 「いや、家の方の仕事だから。ごめんね」 「それは仕方ないですね………じゃあ、おやすみなさい。遼介も早く来てくださいね」 ありがとう、と遼介は寝室に向かう鼓に礼を言う。その表情は特段寂しそうではなく、逆に遼介が寂しく感じてしまう程であった。 鼓を見送り、書斎(みやび荘は広い)のドアを開けて椅子に座る。パソコンを起動し、書類の分別を始める。 集中出来たのは最初の5分だけだった。 「(……ん?“早く来てくださいね”?……遠回しに寂しいから来て欲しいって言ってる?)」 そのあとは指を動かしつつも思考は完全に鼓のことに囚われていた。

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