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幸せな時間は終わりを告げる 8
遼介に言われ振り返った鼓の目に映ったのは、赤いリボンのついた鍵だった。
「生徒会室の、鍵……?」
生徒会室の鍵には分かりやすいように、赤いリボンをつけていた。それが今、わざとらしく床に置かれている。
行方不明だったそれが急に戻ってきたことに鼓は普通に喜び安堵した。
「これで仕事持ち帰らなくて済みますね!」
「うん、そうだね」
そう、遼介は連日部屋に生徒会の仕事を持ち帰っており、大分疲れが溜まっていたのだ。鼓もある程度手伝ったがそれでも終わる気配のない仕事量。
それを懸念していたからこそ、鍵が発見されたことは喜ばしいことだ。
…それが、罠だとしても。
「俺取ってきます!」
上機嫌に鼓は歩き出す。
遼介は訝しげに思いつつも、何も言わず送り出した。
「?」
後ろから見ていた遼介が違和感を感じ、首を傾げる。
鼓はそれに気づくことなく鍵へ近づく。
「っ!」
異変に気づいた時には遅かった。光の微妙な加減により、見えなかったのだ。
本棚と本棚の間に張られたピアノ線。どう考えても、そこにあるのはおかしい。
「ぇ」
足元に張られたせいで鼓の体は揺らぎ、本棚も連動して傾く。
「鼓!」
大きな物音と共に、本棚が倒れ、そして。
「…………あ、りょ、」
鼓は押しのけられ、助かった。
下敷きとなった遼介は、
ピクリとも動くことはなかった。
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