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特別だったことを知らされました 3
鼓の顔が綻び、しかし次の瞬間その表情が翳る。言いづらそうに口を開けば不安がこぼれ落ちる。
「部屋に入れたことないって、でも」
「あ、大丈夫大丈夫、相手の部屋に入ったこともないよ!手料理も進んでは食べなかったし」
すぐに解消されたが。表情もパッと明るくなった。
「潔癖症みたいなところがあったな」
「俺の洗濯する前のパンツ盗る人が……?」
「((洗濯する前のパンツ))」
詩帆と隆盛が頭の中で思い浮かべられる遼介は、非常に冷淡な姿をしていた。
しかし鼓の頭の中では、パンツと靴下片手に喜ぶ遼介の姿が浮かんでいた。
そのような姿、2人には想像がつかない。詩帆は首を傾げたし、隆盛は考える象の様な形を
取ってしまった。
「まぁ……ストーカーだし」
詩帆がそう呟く。諦められている。そのうち遼介と書いてストーカーと呼ぶ日が来そうだ。
「そうですね、この間は俺の汗の匂いを模した香水?作ってました」
「ねぇ鼓くんそれもう変態の域だと思うよ」
詩帆が鼓の肩をガッシリと掴み、本当に遼介でいいの?!と揺さぶった。ガクンガクンと鼓の頭が前後に動く。
話そうにも話せず、ぐ、だかうぇ、だかよく分からない言葉が口から零れ落ちていた。
いい加減フラフラしてきていた所に隆盛がストップをかける。その頃には鼓は目を回していた。
「し、ぬ…」
「詩帆、涼川君が死んだら楽には死ねないと思うぞ」
「隆盛怖っ、鼓くんごめんね?」
「だ、大丈夫です」
頭を押さえつつ、鼓はソファーに座った。流石はみやび荘、ふっかふかである。
「えっと、じゃあ次言うね」
鼓が復活したところで、詩帆は話を再開させた。「鼓に伝えたいこと」の2つ目だろう。
「遼介のボサボサヘアー見たのは鼓くんだけです!」
「ぼさぼさへあー?」
鼓が思い浮かべたのは、毎朝見る遼介の姿をだった。
遼介は出かける前、必ず髪をセットする。曰く「天然パーマ」らしく、ストレートをも跳ね除ける強情な髪質だそうだ。
セットしないと示しがつかない程、寝起きの遼介の髪はふわふわである。
それを綺麗に分け整えるのだから凄い。
「遼介は今まで人の部屋に行ったことがないし、寝泊まりしたことも無いんだよ〜。あの髪型を見た鼓くんは超特別ってこと!」
2人は鼓の頭の上に花が咲くのが見えた気がした。
今まで見てきたそれが特別だったなどと言われれば誰だって喜ぶだろう。
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