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激おこプンプン丸 3
声の低くなった古木に鼓は告げ口しないでと懇願した。
「いや俺まだ何も言ってないけど…そうだな、先輩たちにも言った方が…」
しかしそれも虚しく名案だと言わんばかりに古木に頷かれてしまう。
(墓穴掘ったぁぁぁぁぁ!)
普段平常心を心掛けている鼓が慌てふためき、心の中までが荒ぶる。
「言わないで…怒られる…」
「怒るのは主に氷川先輩だろ」
「遼介にも言うつもり?!」
「起きたらな」
そんな酷いことをするのかと言わんばかりに古木の方を見る。周りに怒っているところを今まで見てきたので、鼓はなんとなく察していた。
(遼介は怒ったら絶対怖い…!確実に鬼のように怖い!!)
正座をさせられコンコンと怒られる未来の自分の姿を想像して、鼓は肩を震わせた。鼓を叱るならおそらくそのような光景になるのだろう。
(殺される…)
流石にそれはない。
さてどうしようか、と古木がうーんと唸ると鼓は思考の彼方から帰ってきて糾弾する。
「鬼!鬼畜!腐男子!」
「おう、腐男子で何が悪い」
最後のは悪口ではないのだが…古木の返答のなんと潔いことか。諦めて項垂れる鼓。そんな鼓に追い打ちをかけるように古木は問い詰める。
「いつからそんなことしてたんだ?」
「………言わなきゃダメなの…この数日間ほとんどです」
「…」
古木は鞄からメモ用紙と筆箱を取り出し、観念したらしい鼓が話すことをひとつ残らず書いていった。
その行動に鼓は震えた声を出す。
「…ねぇなんでメモしてるの真面目に全部ばらすつもりなの本当に怒られるからやめてよ死ぬから遼介怒ると怖いんだからね」
「自業自得。…まぁ俺も悪いんだけど」
「いや古木は悪くな…いやこの行動は完全に悪!こんなに鬼畜だとは思わなかった!お願い遼介にだけは言わないでっ」
「…涼川、素朴な疑問なんだけど」
「な、なに?改まって。怖いんだけど」
「鞄のさ、盗聴器って外してあんの?」
「は?」
(盗聴器ってなんのこと?)
鼓が本気で真っ青になり震え出す。
鼓の鞄には盗聴器が取り付けられている。もちろんそれを付けたのは遼介だ。そしてそれは自動的に遼介のファイルに送られることになっており、つまり、
会話は全て保存されているということ。
古木が言おうと言わまいと、遼介が回復した時点で全部がバレるということだ。
「りょ、遼介のばかーー!どこ、どこだよ盗聴器って!!」
「…ごめん、俺も知らない。ただ付けてるとだけは聞いてた」
(あああああ!もう嫌だ!怒られる!遼介の馬鹿馬鹿馬鹿ー!あの変態!!)
酷い言われようである。
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