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地味な嫌がらせの再開 8

「鼓くん、なにか手伝うことある?」 「お皿出してくれますか?あ、適当で大丈夫なので、4人分ずつ」 「うん、分かった」 料理が終わりに近づくと、ある程度集中が切れてくるようで、詩帆はそれを見計らって話しかけてきた。 おバカだけど気遣いのできる人、と鼓の中で詩帆の評価が決まる。おバカだけど。 最初の頃からすれば随分まともな評価だ。確か初めは鼻血お化けだとか何とか……。 棚から出してもらった皿を受け取ると、鼓はなぜだか気まずそうに詩帆に目を合わした。 「…あの、先輩、今日はすみませんでした」 「え?」 「騒いだり、泣いたり…迷惑かけました」 「あ〜いいのいいの!そういう時もあるって!」 「本当にすみません…最近、涙脆いって言うか、情緒不安定って言うか…」 「まぁ……仕方ないって言うか。恋人があんなになってたら、不安定にもなるって。ね?」 「…はい」 今日、色々と奇行に走ったことを悔やんでいるらしい。冷静沈着な鼓からすれば確かに普通ではないことだ。 「なんで鼓くんあそこまで荒ぶってたの?」 荒ぶってたという言葉に少し必ずダメージを追いつつ、理由を説明する。中に入ってた紙のことをは、古木には言ってない。言ったらなんか…ヤバそう、だから。 紙のことを話した途端詩帆の顔色が一変する。 「それ、」 「実際その通りですし…反論できません。俺が不注意に鍵に近寄ったりしたから、遼介が庇って怪我をしたんですし」 「でも!それは第三者が責め立てていいものじゃないと思うよ」 「……急に話変わりますけど、俺と付き合う前の遼介の様子を教えてください。あと俺と遼介が付き合ってどう思ったのかも」 「本当に急過ぎて話しそらしたとしか思えないんだけど」 「あはは、そんな訳ないじゃないですか。ちゃんとこの話に沿ってますよ」 なら、いいけど…と詩帆は微妙な顔をする。妙に淡々と話す鼓に違和感を覚えながら。

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