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いざ、ご対面5

テープレコーダーのせいで鼓はあまり授業に集中できずに一日を終えた。集中できず、とは言ったが問題が答えられない訳ではなく、そこはさすが鼓、問を見ただけで答えを導き出していた。詰まるところ、授業を聞く必要がない。 ちなみに鼓がテープレコーダーを投げて凹ませた黒板は覆いをされ、ホワイトボードが用意された。教師陣はホワイトボード見て、黒板を見て、何も言わずに授業を進めた。察しのいいことだ。 「では今日の授業はここまで」 ぼんやりしていたため授業が終わったことにすら気づけず、詩帆と古木に話しかけられて鼓は初めてチャイムの音が耳に入ってきた。まるで寝ていたかのように意識が宙を漂っている。 「鼓くん、大丈夫?」 頬杖の鼓を詩帆が覗き込む。目を数回瞬かせて、野沢先輩だ、と小さく呟いた。 「授業終わってるぞ涼川ー」 「そうなんだ、なんかぼーっとしてた」 「鼓くんあんまり食べれてないし、ちょっと貧血なのかもしれないね」 「貧血…」 とりあえず帰ろう、と促され隆盛がいないことに気づく。辺りを見回して見ると影に八九座が影から少し見えた。首を傾げていると、八九座はさっと物陰に隠れてしまう。それに気づいた詩帆が懇切丁寧に教える。 「今日隆盛は家の用事で一時帰宅しててね、代わりに八九座さんが近くで護衛してくれるんだって。鼓くんは気づいてなさそうだけど、いつもはもっと遠くにいるだよ」 (うん、全然気づかなかった。どこにいるんだろうとは思ってたけど、見にくい位置にいたんだ。お疲れ様です、ありがとうございます) 心の中で労いの言葉を浮かべ帰る用意をする。流石にあそこまでわからないように護衛されているため、自分から近づくのは躊躇われた。それに、仕事中はその様な話をすべきではないとも思う。 新しい机は外国式のため教科書等を入れる場所がなく、仕方なく逐一鞄から出し入れしているため帰りの用意はすぐ終わった。授業は受けやすいかと言われると、日本の机に慣れて微妙だそうだ。 そうして古木と詩帆に声をかけ帰ろうとドアに手をかけ開くと、 「あ。涼川ストップ」 入れ替わりに入ろうとした担任によって止められてしまった。

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