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いざ、ご対面 7

職員室に着くと早速先生は書類を渡しテストについての説明を始めた。 (…視線がうるさいしうざい) その(かん)ずっとその場にいる先生、乃至(ないし)生徒からの視線を受け続けさせられた。 鼓は先生の間では未だに鼓のことを“問題児”として扱っている傾向があり、視線が自然とそちらに向いてしまうのだ。 たとえそれが鼓がわざと引き起こした“問題”でなくとも…。 生徒に関してはただの興味本位の様に感じられる。 いやらしい視線などがないため、おそらくあまり鼓を見る機会がない1年生だと思われる。 鼓はあまり他学年との交流はしておらず、特に1年生との関わりが薄い。 3年生は遼介がいるためたまに話しかけられたり所用で3年生の階に行ったりもするが、1年生は知り合いも用事もないのだ。 1年生A「こんな間近に涼川先輩初めて見た」 1年生B「噂通り綺麗…」 1年生A「お近づきになりたいけどあのオーラには近寄れない…」 職員室の向こうではこのような会話が生徒たちの間で繰り広げられていた。 「――以上がテストの日程だ」 「ありがとうございます」 書類と日程表を受け取りお辞儀をする。いくら嫌な先生であろうとは敬意を払うのが鼓流だ。 それに今話していた先生は悪い人ではない。どちらかというと気さくな方であり、生徒に分け隔てなく接することでそれなりに人気のある先生だった。 「じゃあ頑張れよ」 軽く返事をして鼓は職員室を出た。 あまり時間は経っていないと思っていたが既に夕暮れ時になっており、辺りにはオレンジの色の日が差し込んでいる。 それが少し不気味に思え、鼓は帰路を()く。 鼓のローファーのコツコツという音だけが誰もいない廊下に響く。 (八九座さんの足音が聞こえない。本当に近くにいるのかも、分からない。…やばい、怖い) 先生もいないし、廊下を少し走ろうかと思った時。 「!」 足音が増えていることに気づいた。

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