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いざ、ご対面 8

鼓が歩けば、増えたその足音も歩く。止まればもちろん、相手も止まる。そう、つけられていた。直感的にそれが八九座ではないとわかる。 ――では誰なのか ぞわりと肌が粟立ち鼓は廊下を走り出した。もちろんそれに伴い後ろの方から走る音がこだまする。 行き止まりにぶつからないよう、縦横無尽に走り回る。 階段を降り、廊下を走り、渡り廊下を越え、また階段を降り、中庭の木々を避け、階段を登る。 息も絶え絶えだった。 新しい空気が肺に送られるのですら痛く、喉の奥から鉄の味がする。 (くそ、いい加減諦めろよ…っ) 全身に汗をかき、足を縺れさせながらもう一階分階段を登ろうとして、 「っ」 追いつかれ、腕を掴まれた。 同時に八九座がその人物を後ろから羽交い締めにし鼓から引き剥がした。 廊下の上に設置されている窓から薄暗い廊下に夕日が差し込み、相手の顔が浮き彫りになる。それは、見たことのない顔だった。 息があがる鼓、相手もかなりあがっているはずなのだが諸共せず叫んだ。 「死ね!!!!」 「っ、」 目に見える、殺意だった。 言葉はもちろん、相手はカッターナイフを手にしていた。その恐ろしいほどの殺意に鼓は意味もなく鞄を胸に抱きしめ、息を呑んだ。 カッターナイフはすぐさま八九座によって叩き落とされたが、瞳にこもった殺意は抑えれず、血走った目は鼓だけをロックオンしている。 そして今すぐにでも締め殺してやろうと暴れ、罵詈雑言を吐き続けていた。 「死ね、死ね死ね!お前なんかが氷川様に近づくなんて許されると思うなよ!殺してやる!お前があの時本棚の下敷きになってさえいればよかったんだ!!別れろよ!お前が氷川様の側にいると穢れるんだよ!このっ、離せ、離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 八九座が唸るような声を出し壁に“犯人“を押し付け、鳩尾に拳を一発喰らわせ落とした。 鞄を抱き抱え、鼓はズルズルと壁づたいに尻餅をついた。顔は青白く、額には汗が滲んでいる。 「ひ、ぅ……っ」 思わず、喉から嗚咽が零れ落ちた――。

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