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真犯人? 2

鼓は床にを正座させ、自らはリビングから椅子を持ってきて座った。僕も座りたい、とそれが呟いたものの鼓は無駄口叩くなら追い出すと言って黙らせた。キレた鼓は恐ろしい。 「あなたが真犯人というのはどういう事でしょうか具体的に詳しくしっかりわかりやすく供述してください」 「え、これ、取調べか何かなの?」 「取調べだったらよかったのにね。真犯人ってのがどういう意味かまだ分からないけど、内容によっては引き渡すよ。誰にとは言わないけど。遼介、大怪我してるんだから」 鼓は足組みをし、顎を上げを見下ろした。 生徒は後悔していた。思った以上に鼓が怖く、またそれ以上に強烈に冷たい視線を送られ凍えそうだからだ。 生徒心理状況(あーーーれーーー?……あいつは性格悪くてこういう自体に対応できなくて遼介さんに頼るようなひ弱だって聞いてたんだけど。全く真逆じゃん。言った奴マジで許さん!怖いじゃんめちゃくちゃ!!) 「何考え込んでんの早く話せよ」 「は、はいっ」 話しかけられた彼は正座のまま飛び跳ねた。 事の経緯はこうだ。まずこの生徒は他校の生徒である。彼は本棚を倒した張本人(以下実行犯)の友達であり、ある日二人は学校の外で会っていた。そしては実行犯は遼介を盲信しており、鼓が延々邪魔だと言っていた。自分では何もできない非力で性格もよくない、と。夢ノ内は全寮制で情報が他から入って来ず、彼は半信半疑ながらも信じるしかなかった。 『ほんと邪魔なんだ消えて欲しい…』 『でもその涼川鼓が消えたところで、遼介さんがお前を見てくれるとは限らないだろ?』 『そんなことどうでもいい!僕はただあの方の側に誰かだいるのが気に食わないんだ!!』 歯を食いしばり喉の奥から絞り出すような声に彼も少々慄き、じゃあ本棚でも倒して痛い目見せてやったら?と冗談めかして言ってしまった。まさかそれを本当に実行してしまうとは露知らず。 話し終えた彼は涙目で、膝の上で拳を硬く握り震えていた。鼓は何も言わずただただ彼のつむじを見ていた。 「な、なんて言うか…冗談だったとしても、僕が指図したのと同じだと思って謝りに来たんです……。僕があんなこと言わなければ、あなたたちは幸せだったのかも、と思うと苦しくて」 自分が取り返しのつかないことを言ってしまった、責められてもおかしくない、間接的だったとしても人を殺していたかもしれない。その思いを胸に彼は夢ノ内の制服を貸してもらってまでここに来たのだった。 「……………………どうやって知ったの?」 「ニュースで…」 (“氷川”だもんね、ニュースにならないはずがない) 「賄賂って、そこまでして謝りにきたかったの?」 「…………実は払ってません。事情を話したら入れてくれました」 「そうなんだ」 鼓の言葉を皮切りに、その場には長い沈黙が訪れた。

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