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おかえりなさい、怒らないで 3

部屋には鼓と遼介だけが残った。以前体勢は変わらず、遼介は無理やり鼓と目を合わせていた。瞳には静かに怒りの炎が燃えている。 「ねえ、鼓。今俺がどんな気持ちでいるか分かる?」 「ごめんなさい、ごめんなさい、っ」 「答えろ」 震え上がる鼓に遼介は容赦なく言葉を突きつける。 「ぅ…ごめんなさ…」 とうとう鼓の目から大粒の涙が溢れ出した。それを諸共せず、遼介は更に顔を近づけ凄まじい剣幕で鼓を問い詰める。 「泣いたって意味ないだろ。俺ちゃんと録音してたよね『逃がさないから、変なこと考えないで』って。古木くんに頼んだよ。それと聞いてない?そんなはずないよね、俺がいなくなったら鼓は変な方向に思考が行くって分かってたから託したんだし、絶対に聞いてるはずだ。鼓なら意味わかっただろ。なのにさっきの話は何?俺と別れる気でいる?最初から?ふざけるのも大概にしろ。ここまでして鼓が逃げる理由が分からない。それとも、最初からってことは俺とは付き合ってすらなかったのか?」 「ちが、う、…違います、付き合って、ます…ちゃんと」 「じゃあ、なんなんだ」 「おれが、…ぼ、ぼくが、自分のことを信じれ、なくて…」 「…………」 深いため息をついて遼介は鼓の上から退いた。 問い詰められた本人は起き上がることなく、眼鏡を片手に掌で涙を拭いていた。しかし涙が次から次へと溢れ出し止まることを知らない。 「…………急に追い詰めてごめん、つーくんがこうされるの苦手ってわかってたのに」 しゃくりをあげながらぶんぶんと鼓は首を振る。呼び方が変わった辺り少し冷静になってきたようだ。 「ごめん、なさい…」 「言い訳また後で聞く」 ビクッと鼓は少し体を跳ねさせたが、それでも小さくはいと返事した。

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