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おかえりなさい、怒らないで 5

長い間二人は抱き合って、しかし鼓は何かに気づいたように突然離れた。 「遼介、病院から退院許可は?」 遼介は気まずそうに目を逸らした。その意味深な行動を見て先程の言葉通り飛び出して来たのだと察する。 「病院戻らないと」 (そう言えば松葉杖もついてた。怪我は頭の方だけかと思ったけど足も怪我してるのかもしれない…) 不安になった鼓は遼介から離れ四つん這いになり、松葉杖を取りに行く。その光景を見た遼介は普通に松葉杖なしで立ち上がり自分でそれを拾った。 「八九座が処理してくれるから大丈夫だよ」 事実八九座は既に病院に根回し済みで、松葉杖は頭に外傷を受けているためふらついた時の念の為として貰っていたのだ。それを鼓にそのまま伝える。 「でも、起きたばっかりだし診てもらわないと…」 それでも鼓は不安そうで、立った遼介を見上げた。 「後でいいよ。医者に来てもらうし。それより先に部屋に入りたいな」 廊下の奥にあるリビングを指差し遼介は言う。それは少し黒い笑みだった。 部屋は今、散らかっている。鼓はやはり食欲が湧いてこず仕方なくお菓子生活を復活させていた。そのため詩帆隆盛古木が前回来た時と同じような状態になっているのだ。 「…あの、ちょっと散らかって」 「ご飯は、どうしてる?」 痛いところを突かれ鼓は呻き声を出した。しっかりバレている。誰が報告したのか、それとも病院からここに来るまでに盗聴器の内容を全て聞いたのか…。 「つーくん」 「は、はい」 「ご飯ほとんど食べてないんだってね」 「そ、それは、その…えと、あの、食欲が」 「お菓子食べる食欲はあるのに?」 「う…」 遼介を見ると、ゴゴゴゴゴ…と音が鳴りそうなくらい大きな怒りの山が形成されるのが見える。勿論幻覚。 「その他にも、い……………………っぱい問いただしたい事あるんだよね」 「…」 「今夜は眠れないと思え鼓」 「ハイ」 今日は朝から晩まで説教確定になった。

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