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おかえりなさい、怒らないで 6

兎にも角にも、と遼介は鼓の目の前に膝をつく。そしてぐっ、と鼓を抱き寄せたかと思うと 「遼介、どうし――」 軽々と鼓を横抱きにした。 「?!」 「……ほんとに軽くなった」 実際に軽かった。 怪我人に抱っこされるとはこれ如何に。鼓は降ろしてください!と叫んだ。 「俺に心配かけさせた罰だよ」 「それは遼介も同じで…」 「まあそうだね。でも今からつーくんは俺に懺悔しなきゃいけないこともあるし?」 思わず鼓は無言になる。そう、今は甘々な雰囲気だとしても、ついさっき鼓は遼介と別れる気でいることを聞かれてしまっているのだ。 「あんまり、怒らないでください…」 「それはつーくんの話す内容次第だね」 肩を竦め遼介はそのまま歩き出す。暴れると自身も遼介も危ないとわかっているため、鼓は大人しく運ばれる。首に腕回して、と言われて素直に応じた。 行先は意外にも寝室だった。リビングに運ばれそのまま話をするのかと思っていた鼓は、拍子抜けする。 「つーくん、横なって」 「?はい」 布団の剥がれたベッドの上(鼓は最近までリビングで寝ていた)に降ろされ、頭の中でクエスチョンマークを浮かべつつ仰向けに寝転がる。 遼介もベッドの上がり鼓に添い寝するかのように横向きに寝転がった。片手は鼓の腹の上、もう片方は自分の頭を支える。 「あんまり眠れてなかったでしょ。途中で寝てもいいからこのまま話ししよう」 ここ数日眠れなかったことを案じてか、遼介はリモコンで寝室の電気を豆球に変えた。 「え、でも…」 「話が途中になってことで怒るほど、気は短くないよ。さっきはちょっと…あまりにも突然過ぎてびっくりしただけだから」 鼓は小さく頷く。どんなに言っても、遼介は傷つけてしまったのは事実だ。

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