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疑問

結論 怪我はしなかった。 なんで避けたのつーくん、と恨言を言われたものの鼓は遼介にハグをすることで許してもらった。扱い方がわかってきている。 いつも通り教室に送り届けてもらい、鼓は小さく手を振り自分の教室に入って行く。 「行ってらっしゃいつーくん、またあとで」 「遼介またあとで」 もちろん額にキスもされた。 鼓とは階数が違うため遼介も自分の教室に向かうことにする。そして今更ながら昨日から聞きたかったことを思い出した。 (つーくん一応寮に残るか聞かないと…すっかり忘れてた) 夢ノ内は長期休暇中帰宅するか寮に残るかを選択することができる。ほとんどの生徒は家に帰るが、食堂等は開いており困ることは無い。ただし長期休暇は普段とは違い土日は閉鎖しているため、自分でどうにかしなければならない。大抵の生徒は家からシェフを呼んでいる。金持ちめ。 遼介は鼓が寮に残るなら自分も残る気でいた。否、寧ろ鼓は帰らないと思っている。 (何度調べても、つーくんの家の事は何一つ出てこない。それどころか…調査員が帰ってこない。それだけ隠したいなにかがあるということなんだけど) つまり、自分の家のことを隠したいなら家に帰ることはしない。そういう事だ。加えて鼓もあまり家のことは話したがらない。 (権力者に酷く当たりが強いことを見ると普通の家だと思うんだけど、もしそうなら情報が出てこないなんてそんなことはありえない) (涼川とヴァイオリンで考えられるのは涼川 眞白の息子。けれど彼女の息子は8歳で亡くなっているはず。それにヴァイオリンのイニシャルはT.Ou…Tは鼓の頭文字だとして、苗字は削られてて読めなかった。そもそも涼川ならSだ。合わない。それにもしもそれが涼川眞白の息子のものなら鼓が持っている理由は?) (前の校長の前では無理矢理弾かされてたっぽいし弾けるのは知ってる。学力推薦でって言ってたくせにあのくそ校長、学費と引き換えに鼓の演奏堪能しやがって……。でも、それならやっぱりあのヴァイオリンは鼓の物で合ってる…?涼川眞白の息子を調べないと) 頭の中で糸がもつれている。遼介は痛む頭を抱え教室に入った。

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