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金城と古木 1

遼介がそんなことを考えているとは露知らず、鼓は教室で固まっていた。古木に盾代りにされているからだ。 「…何これ」 「ごめん涼川、助けて」 古木は鼓より6センチ大きいため体がはみ出ていて意味はないように感じるが…。 そしてその二人の前に立っているのはさらに高い金城だ。 「てか誰?」 金城はゆっくり綺麗なお辞儀をした。 「お初にお目にかかります涼川様。涼川様のファンクラブ会長を務めております金城郁哉でございます」 「涼川様?!ファンクラブ?!」 初めて聞く事実に鼓は目を白黒させた。そう、郁哉は鼓のファンクラブ会長兼古木のファンクラブ会員なのだ。 「え、ファンクラブって、遼介とか野沢先輩にあるあれ?」 「はいまさにその通りでございます」 「いつからそんなのあったの?!」 「涼川様が入学したその日からです」 ぽかん。まさにその表現がしっくりくるほど鼓は呆けた。まさか自分にあるとは思いもしなかったのだろう。何せ最初の印象は、新入生代表挨拶のせいで最悪だったはずだから。 「そ、そっか…それで、なんで金城?は古木追っかけてるの?」 どうやら一旦それは保留にしたらしい。それよりもこの状況を聞くことが優先だと考えたようだ。 「私、古木くん……慶くんのファンクラブも入っておりまして」 「兼任できるんだ」 「そして創設者でもございまして」 「なんか肩書きすごいね」 「そして恋人立候補者でもありまして」 「ふむふむ、なるほd……………………なんて?」 思わず聞き返した俺は悪くない、と鼓は思った。 「恋人立候補しております」 「……ふ、ふる、ふふふる、ふるぎ、ちょっとこっち」 錆びた機械のように鼓はギギギと首を後ろにまわし古木の腕を掴んで1度教室から出た。そしてすぐさま教室にいる金城を指さしなにあれ?!と叫ぶ。 「俺が聞きたいわ!!!同室だったやつが恋人出来できたからってそいつ部屋移動したんだけど、次の同室者あいつだったんだよ!俺部屋入っていきなり告られてさー!ファンクラブです!って言われて…しかも惚れた理由が俺のケツ」 座り込んだ古木も負けじと叫んだ。憐れである。 「…最近古木が疲れてたのって」 「…………あいつ風呂とか寝室とか覗こうとするから、攻防戦してる」 鼓は同情の目を向けた。 「つかアイツ猫被ってるよ…俺の前もっとはっちゃけてる」 「はっちゃけ…」 「多分涼川の事畏れ多いとか言ってたからだろうけど…」 「俺畏れ多いの?」 「少なくともファンクラブの人に今まで会ったことないのを見る限り喋りかけれないんだろうな」

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