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夏休み 2

「あ、ごめんなさ…」 我に返った鼓はテーブルを慌てて拭き始める。しかし気が動転しているためか、うまく取りきれない。逆に汁を広げる一方だった。 「…………」 「………俺の方こそ、ごめん。誘導させるみたいになっちゃって」 「…………」 「手伝う」 隣にいた遼介も部屋にあったテッシュを取りテーブルを拭いていく。 鼓はただ、小さく頷いた。 二人の間に気まずい空気が流れた――。 残りを食べ終えた2人は気まずいまま別れ教室に戻った。 鼓が教室に着く頃には既に古木は席に着席しており、神妙な顔をしていた。 「あ、涼川」 席に近づくのに気づいた古木が鼓に声をかける。 「……」 「涼川のいう通り昼飯一緒に食べたけど意外と大丈夫だったよ。なんか普通の奴だった。ただ俺についての話が多くて…って、どうした?」 無言で椅子に座って話を聞く鼓を古木は不審がった。いつもなら何かしら相槌があるはずなのだがそれがない。 「なんか、泣きそうな顔してるぞ」 「………………うん……泣きそう」 そう返されるとは思わず古木は思わずえ?と聞き返してしまった。 「どうしよう古木、俺、遼介にうるさいって言っちゃった…」 「は?」 古木が目を丸くした途端、鼓の唇が小さく震え始めた。そして大粒の涙が溢れ出す。 「け、喧嘩したのか?!」 「多分喧嘩したぁぁ……っ」 人前で声を上げて泣いたことのない鼓が、今はわんわんと泣いていた。遼介にうるさいと言ってしまったことが想像以上にショックが大きかったようだ。 古木はそれを見て動揺し慌てふためいた。昼休みで教室が閑散としていたことが救いだと言える。 「ど、え、なん?!お前ら喧嘩するの?!」 「遼介が俺の実家来たいって…ヒック…だめって言ったら言い合いなって。俺言わなくていいこと口滑らせて言っちゃって、…遼介にそのこと問い詰められそうになって思わずうるさいって……グス…」 泣きながら鼓がそう言う。ズボンのポケットに入れていたハンカチを顔に当てているため少し声がくぐもっている。 「言わなくていいこと…?」 「うーーーー…俺の秘密なの……うぇえええん!!」 「ちょっ、収集つかねぇなこれ?!どうすんだよ!!!」 宥め方など知らない古木は、とりあえず、と鼓を保健室に連れて行くことにしたのだった。

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