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夏休み 5
項垂れている遼介をどうすべきか迷っていると、部屋のチャイムが鳴った。ほとんどの生徒が帰省している中、一体誰だろうと詩帆が見に行くと。
「鼓くん、どうしたの」
大きなカバンを抱え、なぜが少し目が赤い鼓が立っていた。荷物を一旦床に置き、何かを決めたかのように頷く。
「あの、えっと……急遽今日帰ることになっちゃって、挨拶に」
「え?!今日帰るの?!」
こくこくと鼓は数度頷いた。詩帆は驚き、遼介どうしようかとさらに考えることになる。
「遼介、いますか?」
しかしその言葉で彼が遼介を迎えに来たということが分かり、おそらく喧嘩は終わりだろうと推測した。
頭に思い浮かぶのは、カウチに寝そべり虚空を見つめる遼介。
……正直引き取って欲しかったのだ。
「いるけど……なんていうか、死んでる」
「………………そんな気はしてました」
ちらりと中を伺う鼓に詩帆 は遼介連れてくるねーと奥に引っ込んで行った。
鼓はここ数日間ずっと頭を悩ませていた。どうやって言い出すべきか、どうやったら遼介を傷つけずに話せるか、と。
(俺は、遼介に俺のことを知って欲しい。始まりが…うん、すとーかーだったとしても、それでも俺は遼介が好きだ。愛してくれるから好きなんじゃない。俺だって遼介の事を安心させたい、そばにいてあげたい。…好きなんだ、この想いは一方通行じゃない。ちゃんとこの想いを伝えたい)
そして鼓は意を決してここに来た。
――一緒に家に来てもらうために。
「つーくん今日帰るの?!」
ドタドタと奥から走る音が聞こえ遼介がすぐ玄関に顔を出した。鼓は勢いに押されそうになったが、ぐっと堪えあの!!っと叫んだ。
「りょ、すけ!」
「あ、ああ、うん、なに?」
鼓の気迫に負けたじろぐ。
「おれ……あの、えっと虫がよすぎるのも程があるのは重々承知なんですけど…お話したいことがあって!」
「うん」
「遼介い、いっ……い、………………、」
言い淀んでそのまま黙ってしまった鼓。口をパクパクさせるだけで言葉が出てこないのだ。
「…っ、ぁ、………っ!」
数日間まともにはなしていなかった代償は大きい。
少し待ってみたがどうしても出なさそうなので、遼介は1回部屋戻ろうか、と鼓の手を取った。
「詩帆ありがとう、部屋戻るよ」
奥にいる詩帆にそう声をかけると気だるそうな声が返ってきた。
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