376 / 435

夏休み 9

近づいてきた遼介は別段なにかする訳でもなく、鼓の頭をぽんぽんと優しく叩いた。 その行動に鼓は安心して手を外してしまった。しかしそれは誤算だった。 「あの時のつーくん……かわいかったよ?」 遼介が爆弾発言をしたからだ。覗き込むように顔を見られ、鼓は頬が赤くなっていくのが感じられた。 「〜〜〜馬鹿!」 「かわいい」 「馬鹿、馬鹿!」 遼介ははははは!と軽快に笑い鼓の言葉にも意に介さない。鼓はあの時のことを1から10まで全て思い出してしまい、先程とは違う意味で震えた。 「恥ずかし…っ」 「あの時のつーくんはえろくてさぁ」 「やめて馬鹿遼介!」 ぽかぽかと遼介の胸を叩くが、遼介は痛がる様子も見せずただただ笑うばかり。その余裕さを見て鼓は頬を膨らませた。 「余裕、腹立つ」 「つーくんの前ではかっこよくいたいからね」 鼓はツイ、と目を逸らした。胸を叩いた状態で止めていると、遼介がその腕を掴んでそのままソファーに押し倒した。 驚いて遼介を見る。 「な、に」 「つーくん、少しエッチなことしない?」 「なっ、もう家に帰らなきゃで」 何を言ってるんだこの人、という顔で鼓は遼介を見た。 遼介は、既に欲情した顔をしていて。鼓はどの辺に欲情するような会話があったのだろうと冷静に考えてしまった。 「家までどれくらい?何時までに帰れとかあるの?」 「……ない、けど…」 「じゃあ大丈夫だ。つーくんのサンドイッチはまた今度食べさせて」 「ちょっ」 鼓の制止も聞かず、遼介は鼓のシャツに手を突っ込んだ。いつの間にか両手は一括りにされ頭の上でまとめられている。なんと行動の早い事か。 や、やだと足を動かして抵抗する鼓の上に跨り、遼介はシャツを捲りあげ脇腹に口をよせた。 「ひっ」 びくりと鼓の体が跳ねる。 片手で服を脱がせながら、口であちこちに吸い付く。その度に鼓は小さな声を上げ(かぶり)を振る。 そして早々に脱がされたシャツは手首のところに纏められ、遼介は両手とも使えるようになってしまう。狙っていたのだろうか。

ともだちにシェアしよう!