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夏休み 12

汗をかいたために風呂に入り、用意ができたのは14時ごろなのに結局家を出たのは18時半ごろになってしまった。風呂の後遼介はやっぱりお腹空いたなといい鼓に簡単な軽食を作ってもらっていた。遅れたのはそのせいある。 玄関を出て、しっかり施錠されていることを確認してからエレベーターに向かう。荷物は持たせたくない遼介VS持ちたい鼓の戦いが勃発し、一部遼介に持ってもらうということで和解したため、鼓の荷物は若干少なめだ。 「すっごく遅くなった。遼介がやっぱりお腹空いたとか言うから…」 「でもつーくんが動かなかったのもあるよね」 エレベーターを降りた後裏門の方に向かいつつ、鼓は遼介を睨め付けた。 「動かなかったんじゃなくて、動けなかったんです。原因は遼介!」 「つーくん腰砕けてたもんね」 「…風呂で襲おうとしたこと忘れてませんからね」 目を逸らす遼介。風呂に入ろうとした時、腰が砕けていたため仕方なしに鼓は遼介に補助を頼んだのだが、これが大きな間違いだったようで。自分に体を預けて安心してぼんやりしている鼓を見て、彼はもれなく発情してしまった。後ろから抱きしめ尻も揉みしだかれたため、鼓はその変態の足を思いっきり踏んだのだ。 流石の遼介も呻きながら素直に謝っていた。 「かわいかっ「それ以上言ったらご飯作って上げません」……ごめんなさい」 誠意一杯の力で遼介の腕を叩いた。いてて…と幸せそうな顔をして彼は腕をさすった。全くもって痛そうではない。ふん!と鼓はむくれっ面になった。 だが一瞬のうちにその顔を曇らせる。裏門に着いたのだ。 「……迎え、呼びます」 「うん、分かった」 鼓はポケットから携帯を取り出してどこかに電話し出した。Rrr…と短い呼び出し音の後男の声が出る。短い会話の後、すぐに静かに車が裏門に到着した。どうやらすぐ近くに停車し待っていたらしい。 車は外国車で、さらには富裕層しか乗れないそれ。なんとなく予想はしていたが、遼介は驚かずにはいられなかった。 運転席から人が降りてきて鼓達にお辞儀をした後、白い手袋をした手でドアを開ける。鼓はため息をついてありがとうと小さく言い車に乗った。遼介も会釈だけして中に乗り込む。 高そうな皮張りのシートは座り込めば深く沈んだ。遼介にとっては家に帰る際や父親とパーティーに行く時などに何度も乗ったことがあるため馴染み深いものだった。…もっともこのような場面で乗るなど想像もしていなかったが。

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