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夏休み 17
「つーくんの料理の腕前はどこから?」
「質問攻めですね…色んな人からです」
困ったように笑いながらも、鼓はきちんと答える。手にはいくつかの食材が抱えられていた。
「お父さんは作らなかったの?」
「さっきの話にも繋がるんですけど、あの人食事に興味無い人なので作るという概念がないというか…ご飯と言われて出されたのが栄養バーを牛乳に浸したものだったり」
鼓は笑顔なのに、肉のトレイがギシギシと音を立てている。壊れそうだ。
どうやら先程の皿に栄養バーのせて出したと言うのは一種の意趣返しだったようだ。
「色んな人って」
「…………俺、10歳から14歳まで海外で過ごしてるんです。そこで出会った人達に教えてもらいました」
これは後で話す時に聞いた方がいいかな、と遼介は口を閉ざした。
鼓もまた料理に集中するために閉口しリビングは静かになった。
食材を着る音、焼く音、煮る音…
(……また品数多くない??)
遼介は度々鼓を振り返った。
キッチンとリビング。近くも遠いその距離感を遼介はいじらしく思い、立ち上がる。まるで吸い寄せられるように鼓に近寄ると、彼はどうしたんですか?と手を止める。
手にはピーマンが握られていて思わずうっ、となったが遼介は敢えて無視して鼓の背後からのしかかった。
「ぐぇ…なんですか遼介」
「んー、寂しくなった」
「ええ、この距離で?」
「うん。だからつーくんを補給する」
補給って…と少し照れながら鼓は復唱した。後ろから聞こえる遼介の呼吸音を聞きながら鼓は料理を再開する。
子気味いい音で安心感を得ていると、鼓が冷蔵庫の物取りたいので離れてくださいと言う。
「えー」
「えー、じゃないです。遼介もお腹空いたでしょ」
「俺はつーくん食べたい」
「…………恥ずかしいセリフ淡々と言わないでください!」
もう離れて!と遼介を引き剥がし冷蔵庫に向かう。耳まで赤い。可愛くて思わず顔がにやけてしまい手で口元を隠すと、振り返った鼓が神妙そうに遼介を見た。
「そんなにピーマン嫌いですか?」
「いやピーマンは好きじゃないけど今はそうじゃなくて」
「そうですか、じゃあピーマン炒め作りますね」
「そういう事じゃなくて…!」
鼓は頭の上にクエスチョンマークを浮かべた。全く会話が噛み合っていない。
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