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涼川 鼓 1
side鼓
言ってしまった。
遼介は短く返事しただけでその後何も返してくれない。何を思ってるのか、分からない。
騙された?嘘つき?どうして話してくれなかった?
怖い、怖い、こわい。
ジャン·ルイスと言えば、知らない人はいない大企業の社長で。
涼川眞白と言えば、知る人ぞ知る有名なヴァイオリニストで。
俺は、その人たちの息子で…。
でも報道とかはされていない。ジャン…父さんが俺を自分の息子だと認めなかったから。母さんも俺が産まれる前に離婚して1人で俺を育てた。途中まで。
名前は、母さんの姓を名乗っている。ルイスは嫌だったから仕方なしに…。
贅沢とかそういうのは全くしたことがない。むしろ、劣悪…だった。
鼓、と呼ばれて恐る恐る顔を上げた。何を言われても受け止める覚悟で。
なのに遼介は、優しい顔をしていた。
「なん、で」
「ん?」
「なんで問い詰めないの?」
そう言うと遼介は困った顔をした。
「鼓が勇気を持って俺に話してくれたことが嬉しいから」
「……」
なんで、この人は、こんなに優しいんだろう…、
「俺遼介のこと騙して…」
「騙してないよ。話せなかっただけ。……こんなに大きいこと抱えて、しんどかったでしょ」
嗚咽が漏れそうになる。涙も零れそう。遼介が俺の頭を優しく撫でるから…。
「〜っ泣きたくないのにいぃぃ…」
「泣いていいよ」
今泣いたら話さなきゃいけないのに話せなくなるのが嫌で、奥歯を噛んでぐっと堪え抵抗しようとする。
「だめ」
でも遼介は俺の口に指を入れてそれを阻止した。指があったら、噛めない。上目遣いをしてみるけど、かわいいけどだめ、と言われて諦める。
そしたら涙がぽろぽろ流れてきた。
「だっ、て俺……権力とか富とか嫌いとか言いながら、自分資産家の息子で…っ」
「でも理由があったんでしょ?」
「う、……」
「つーくんは理由なしにそんな事しないって知ってるから」
「うーーー…!」
ぽかぽかと優しすぎる遼介の胸を叩いた。
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