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涼川 鼓 2
どれくらい経ったか、階段を上る足音が聞こえて俺は遼介から離れた。家が広い分、足音がよく響く。恐らく…あの人だ。
上がってきたあの人は俺と遼介が居るのを見て少し顔を顰めた。
「……性行為は部屋で」
「してねぇよ!」
父親だと思いたくないしいい印象もないから自然と口が悪くなる。てかなんで2階に来たの?
無言で睨み合う。先に目を逸らしたのは、あの人。
「風呂、よかったのか」
「流してくれて結構です」
まさかそんなことを聞きにわざわざ2階に?今度は俺が顔を顰める番だった。
この人は、どういう思いで俺の傍に居るのだろう。俺という存在を否定しながら、俺を拾い、海外に連れて行って…。
分からないから、余計に、傍に居たくない。そして、言い合いになる。
「…遼介、部屋行って」
「…鼓」
数歩離れると、遼介が心配そうな顔をしてこっちを見てくる。その顔に決断が鈍りそうになった。
でも恋人と言っても、遼介は客人だ。喧嘩してる姿を見せるのは忍びない。
「俺は大丈夫だから。部屋に鍵……そうだ言いたかったんだなんで部屋の鍵壊してる訳?!」
喧嘩、始まってしまう。
遼介に目配せをして、お願いと念じる。謎にエスパーという超能力を持っている遼介なら分かってくれると信じてるから。
そして通じたのか、遼介はあの人の脇を通って階段を上っていった。軽く会釈もしたのが見えた。
廊下には俺とあの人だけ。俺も見ていたくなくて目を逸らした。
「……新しい彼氏か?」
少ししてからそう聞かれ、何が言いたいんだと苛立ちが増す。
「だから何。ってか俺の質問に答えてないんですけど?」
「鍵は……眞白が、壊した」
…母さん……?
顔ごと父さんの方に向ける。目を逸らしたままだけど、気まずそうだった。
「…そんな言い訳通用すると思ってるの?母さんはこの家には寄り付かないって知ってる。今更帰ってくる理由もないだろ!」
なんでそこで母さんの名前が出てくるんだ。本当に、今日は悪いことしか起きない。運転手には要らない話をされ鍵は壊され父さんとは鉢合わせするし。
「……帰ってきたんだ」
「は?」
「お前に、会いたいと」
「――――っ!」
一気に過去の記憶が甦り、鳥肌が立つ。
「ふざけんな!なんで俺にその話をした?!俺が会いたいと言うとでも?!」
「せめて話はしなければと」
「要らない!!頼むから放って置いてよ!!!」
部屋に逃げ込んでドアを抑える。ドンドンとドアを叩く音と俺の名前を呼ぶ声が聞こえてたけど無視した。
数分もすれば収まって、辺りは静けさを取り戻した。ドア背にしてズルズルと座り込む。
なんで、……なんで、今更、…。
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