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涼川 鼓 12

ギギギギギと不気味な音がなりそうな位首をカクつかせながら、母さんが俺を見る。 「つづみ、いま、なんて?」 「ひっ」 真っ暗な瞳に俺は思わず小さく悲鳴をあげた。 瞬間、床に落とされる。痛みより恐怖が勝り後ずさるった。 母さんは顔面を覆いながらよろよろと千鳥足にふらつく。 「鼓が、鼓が私の鼓が反抗を、私に反抗したわ」 「お、おかあさん、」 声をかければ、指の間からぎょろりと目玉が動く。 ――これは、だめだ 気づけば俺は母さんに打たれていた。口の中に血の味がする。今までにないくらい強く叩かれた。 「鼓!!!」 「っ、」 怒鳴り声が広いリビングに響き渡る。もう、母さんは母さんじゃなかった。 「私のお願い聞いてくれないのね?そうなのね?鼓は悪い子になっちゃうのね?!そうなのね?!」 真上から見下ろされて問い詰められれば息をすることすら出来ない。 ――これは誰 「ちが、ぼくは」 「言い訳なんて要らないわ!!!!」 母さんは俺を通り越してテーブルの上にあった料理皿を床に叩きつけた。料理や破片が飛び散り、破片のいくつかは俺に刺さった。 「あんなにたくさん愛してあげたのに!!!あなたはあの人と同じことをするのね?!」 ぶんぶんと必死に首を振るけど、母さんは叫ぶばかりで俺の話は耳に届いていない。それどころか反乱狂になっていて自分が何をしているのかも分かってないようだ。 あの人って、つまり…お父さん? 考える暇もなく母さんが暴れる。せっかく作られた料理はテーブルの上からほぼ落とされ、床を傷つけていく。 俺の好物も、何もかも。……お母さん、どうして…。 「眞白、落ち着こう」 「…………ああ清さん…!」 壊すものがなくなって呆然と立ち尽くす母さんを、ようやく清さんが肩を抱いて宥めた。ここまであの人は傍観していた。 母さんは清さんの胸に顔を埋めさめざめと泣く。 「わたし、わたし鼓の育て方を間違えたのかしら…」 「いいや、君は何も間違っていないよ」 「でも…!」 顔をあげた母さんの額に彼はキスをする。そして俺を見て、ニッコリ笑った。まるで、悪魔のよう…。 「鼓がいい子になるように罰を与えればいいんだよ」 …言い放つ言葉も、悪魔の囁きのようだった。母さんは少し固まったけど、次の瞬間にはパァっと表情を明るくさせた。 何を言っているんだろうか、この人は。

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