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涼川 鼓 18
どくんどくんと心臓が嫌な音を立てている。母さんが俺の事を殺してくれって、言ったの?俺がいい子じゃないからもう要らないの?
「実際は君を死んだことにして死亡届出して欲しいって言われたんだけどね…」
声が遠くなる感じがする。ふらふらしてドアにもたれかかった。死亡届…って、なん、…で。
「…きき、まちがい」
「違う」
「お母さんは、そんなこと、言わない」
「…ごめん」
またゆっくり車が動き出す。その謝罪はどういう意味で使ってるのだろう。
「だから、僕は君に聞きたくて連れ出した。……このまま眞白に戸籍ごと殺されるか、僕の手を取って違う場所に逃げるか、選んで欲しい」
「なに…逃げる……?」
「まあこれから少しの間治療という名目で裏の病院に居てもらうから、その間に考えればいいよ」
「や、帰る…」
「帰っても死ぬよ。考えればいいとは言ったけど、正直これ以上君をあそこには置いておけない。死亡届が出されたあと、君は本当に眞白に殺されてしまう。今日がいい例だ」
「………………」
それっきり清さんは喋らなくなってしまった。俺も再び横になり目を瞑る。
…母さんは、もう俺の事を愛していないのかもしれない。それどころか憎んでいるのかもしれない。自分より仕事を選んだ父さんと同じように。
もう嫌だ…………。
病院は確かにそこにあった。森の中、異様に白い建物が目立って建っている。
車は駐車場に止まり、降りてきた清さんが後部座席のドアを開けた。起き上がってみると辺りは既に暗く、かなり不気味な雰囲気なことに気づく。
「降りるよ」
抱き抱えられそうになったから腕を叩き後退りして抵抗した。
「触らないで」
「車乗る時は触ってただろ。それにそんな状態じゃ降りれないよ」
「いやだ」
駄々こねないで、と狭い車内で暴れる俺を彼はいとも簡単に捕まえてしまう。非力なのが嫌になる。
すると泣きたくないのに涙が出てきて、八つ当たり気味に清さんの腕に噛み付いた。
「っ…いい、けど…さ、…むしろ君がそんな感情表現出来たことに驚きを感じてるよ」
効いていない気がする。冷静な判断をされて怒る気にもなれず大人しく腕に収まった。
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