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涼川 鼓 19
簡単に診察を受けレントゲンを撮り異常がない事が確認されると、清さんはまた俺を抱き抱えた。もう完全に諦めきっていた俺はされるがまま。
頭に巻かれた包帯がごわごわして少し気持ち悪い。
「今度はどこに連れてくの」
何か話していないと震えだしそうで、院内を歩く彼に聞く。
院内は非常灯のみ灯っている状態だから薄暗く、俺は少しいやかなりびびっていた。
「君を匿うための部屋、かな」
「僕逃げるだなんて言ってない」
「絶対安静のためだよ。それに今家に返しても眞白がまた怪我をさせる」
「……母さんのこと愛してるんじゃないの」
「愛してるとも。だからこそこれ以上眞白に罪を重ねて欲しくない」
「自分の言ってることが矛盾してるの、分からない?愛してるなら罪云々の前に母さんを止めることが先でしょ。俺を引き離したところで母さんはヒステリックになって何するか分からないのに」
「君みたいな子なんて言うか知ってる?減らず口って言うんだよ」
「嫌なら家に返して」
「……」
こいつ…話聞かねえ。
無言になった清さんを睨みつけさっきもっと強く噛んでやればよかった、と心の中で毒づく。しかしお陰で多少なりとも気が紛れた。
でもそれは一瞬のこと。景色はいつの間にか院内を離れ長い廊下を進んでいた。当たり前だがここも非常灯。また怖くなってきた。
耐えられなくなって目を瞑って堪える。着くなら早く着け…!!
「なんで目瞑ってるの?」
「話しかけないで」
俺は下を向いていたのに、なぜ分かったのか清さんが声をかけてきた。今精神統一して幽霊なんかいないって思い込もうとしてるから、気が散るから話しかけないで。
「……怖いのかい?」
「話しかけないで!」
「あと少しで着くから我慢して」
本当は頼りたくないのに俺はその言葉を信じて必死に耐えるしか無かった。
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