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涼川 鼓 25

突然連れて来られた先父さんの家だという屋敷だった。 もちろん言葉なんて理解できずにいた。でも唯一頼れる父さんはほぼ仕事でいない(頼ったかどうかは別として)。 それなのに近くのスクールに通わされた。しかもそのスクールは外国の子供たちが通うところで、日本人など一人もいなかった。 ほんとにイカれてる。 けれどもたまに帰ってくる父さんにこんなこともできないのかって顔をされるのが嫌で、死に物狂いで勉強して必死で授業に追いついた。 料理は家政婦の人が教えてくれて、生活の仕方は地域の人が教えてくれた。 父さんは何もしない。それどころか俺がいるのを忘れているかのように仕事に明け暮れ帰ってこない日々。 いっそのこと荒れてしまえれば楽なのに、そこは俺の知らない異国の地で、そんなことをすれば死ぬ危険性だってある。結局俺は父さんの思惑通り勉強をして家に閉じこもることしかできなかった。 そのうちスクールで勉強できることがなくなってしまって、大学にスキップ入学した。12歳の頃だったと思う。 最初のうちは否応なしにしていた勉強だったけど、気づいたら数式を1から構成したり、知らない言語を学ぶのは楽しくなっていた。 もうこのままここで生活していくものだと思っていた矢先、父さんが日本にも事業を拡大するからと急遽帰国することになって。 社長なのに動くのと問うと、自分が動かなければ下がついて来ないからだと返された。 そうやって会社のことばかり考えているんだよな、と母さんが言っていたことがよく分かった。 仕事が恋人。 『俺、行かないよ』 『それはできない』 『は?自分だけ行けばいいじゃん、なんで俺まで巻き込もうとするの』 『日本で学ばなければならないことがあるからだ』 ふざけんなと叫んだのをしっかり覚えている。学ばなければならないというならどうして連れ出してんだ、いっそのこと放っておいて欲しかった、と。 しかしその問いにも父さんは無言で、俺は言われるがまま日本に強制帰国した。 みんな、身勝手だ。 俺を愛していると言った母さんも、ずっと一緒だと言った清さんも、心配で探していたと今更取り繕うように優しくする父さんも、みんな身勝手だ。 俺が愛を信じられなくなり、権力や地位をも嫌いになったのはこの人たちのせい。 だから、俺は未だに遼介を試してしまう…本当に俺の事を愛しているのか、権力で俺殺してしまわないかって…。

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