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喧嘩するほど仲がいいなんてことはない 1

「…ん」 いつ寝たのか、気づけば部屋は既にかなり明るくなっていた。もしかしたら、昼なのかもしれない。 鼓はぼんやりとベッド脇の壁を見つめる。この家は、鼓が幼少の頃に母親と住んでいた家だ。そしてこの部屋は、鼓が軟禁されていた部屋だ。 だからこそ鼓は家に帰ることを嫌う。父親がどういうつもりで家を買い戻し、この部屋を自分に宛てがったのかは知らないが、とにかく気が悪い。 (知らないはずないのに、なんでこんなことするんだろう) 長時間寝ていたせいか体がだるく、腕1本も動かせない。なんなら寝がりも打てない。 (……寝がりも打てない???) 寝がりも打てないほど疲れてるってなんだと訝しげに思い、自分の体を見ると、腕が巻きついている。その腕を辿りながら振り返ると、案の定遼介が隣で寝ていた。 「……………」 ペシンッ。 「いった!つーくんなんで?!」 「なんで普通に寝てるんですか!」 鼓は容赦なく遼介の腕を叩いた。彼はビックリして文字通り飛び起きた。 鼓を抱き抱えながら寝ていたのは、昨日3階の客室に行ったはずの遼介だった。 (鍵ないから当たり前だけど、なんで普通に隣で寝てるの!寮でも最近一緒に寝てなかったからドキッとしちゃったじゃん…) しかしそんな思いを遼介露知らず、寝ぼけなまこといった感じで、髪をかきあげた。 さすがに昨日風呂に入っていないため、遼介の髪はセットされたままになっている。少しぴこぴこ飛び出ているが。 鼓は何気に遼介のセットされていない髪が好きだ。ふわふわで、触り心地がいい。たまに膝枕を要求する遼介の髪を、鼓は延々触っている。遼介もそれを知っているため、大人しく触らせる。 遼介が伸びをすると、鼓もそれに合わせて体を起こした。 「おはよう、鼓」 「お、はよう…ございます」 「はい、ちゅー」 「っん!!」 「寝起きのつーくんかわいいね」 いきなり唇にバードキスをされて鼓は顔を赤に染めた。遼介は、甘い。蕩けるくらい甘い。 ううううと鼓は唸りながらもう一度ベッドに撃沈した。存外、鼓は照れ屋である。

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