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喧嘩するほど仲がいいなんてことはない 2
昨日は父親に会って、部屋に来られて…、思い出していくうちに鼓は自身の過去について振り返ったことも思い出した。
(やっぱりこの家にいるとろくなことがない…早く出たい。その前に遼介にも話してしまわないと、でもお腹空いたな…もうあの人仕事に行ったかな)
寝起きでまだ考えがまとまらず鼓はキスされた唇を触ったままぼんやりしていた。遼介はそれをいいことに、鼓を後ろから抱きしめる。そしてそのまま先ほどと同じように寝転がった。
「もっかい寝ようか」
「え、いや……起きてご飯食べて、遼介に話さなきゃって思ってて」
「うん、でもさっき下で物音したからまだいると思う。ご飯はつーくんが大丈夫ならまた後で。鉢合わせしたくないでしょ?」
「……はい、ありがとうございます」
頷き、素直に鼓は礼を言った。父親のことを考えると空腹などどうでもよくなってしまった。
「でもそれと二度寝は話が違う気が」
「遠慮しないで」
「いやあの遠慮じゃなくて」
「たまには惰眠を貪ろう、そうしよう」
「ちょっと?!」
鼓が身を捩るも遼介は全く離す気がないようで、さらに鼓を抱き寄せた。何度か抵抗を試みたが無駄で、鼓はおとなしく腕に収まることにした。
(この状態でも、話せるし…。それに顔を見ながら話したくない)
鼓は自分の過去が嫌いだった。思い出したくないし、知り合いの家で記憶が飛ぶほどにされた虐待の話は特にしたくない。たとえ記憶が曖昧(と言うより全くない)であっても性的なことをされたのは聞き及んでいるし、それを遼介に話したくはなかった。
(自分が汚いとか…記憶飛んでるからそういう風には思わないけど、ただ遼介が怒って悲しむのが嫌だ)
もし遼介が鼓の話を聞けばどういう行動に出るのかはなんとなくわかっている。確実に見つけ出して抹殺するのだろう。殺すくらいならいいほうかもしれない。夜の仕事に流されたり日の目を見ることがないような生活を送ることもあるだろう。
しかし、
(あいつらがどうなろうと俺はざまぁみろとしか思わないけど、遼介が手を汚すのはいやだなぁ)
それを鼓はかわいそうとは思わない性格だ。
最早潔い。
(俺が清さんのことで意気消沈して抵抗しないのをいい事にクソみたいなことやったやつらに慈悲なんてないよねー)
もし目の前に彼らが居たら、鼓は足蹴にすることだろう。あの時はどうもお世話になりました、と。小さい頃のかわいかった鼓はどこに行ったのだろうか。
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