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喧嘩するほど仲がいいなんてことはない 3

1食抜いたところで死ぬわけじゃないし…と鼓は食事を諦め目を閉じた。すると疲れが抜けきっていないのか、徐々に眠気が襲ってくる。 起きたら遼介とご飯を食べてお話しよう、と改めて決意したその時。 "〜♪" 静寂に包まれていた部屋に突如鳴り響く、アップテンポな音楽。遼介が驚き辺りを見回すと、入口横の壁に電話機がかかっていた。カラオケルーム等で見るあれである。 「…え」 「ほっといていいですよ」 そちらを見向きもせず鼓は淡々と答えた。恐らく父親からの電話のようだが、鼓は出る気がなさそうだ。遼介はつーくんがそう言うなら…と再び横になったが、電話は鳴り止まない。 2人とも無言だが、鼓のイライラは遼介にもひしひしと伝わってきていた。 無視し始めて3分が経った頃、ついに限界に達した鼓がベッドから物凄い勢いで飛び出し、 「うるっさい!」 と大声で受話器に向かって叫び、それを叩きつけるようにはめ直した。なかなかに強い、もしかしたら壊れたかもしれない。 遼介はここに来てからつーくんの色んな姿が見れるなぁ…と軽い現実逃避をしていた。というより慣れか。 『クソ親父…部屋の電話鳴らせば俺が出ると思いやがって。ほんと最悪まじであり得ない』 流暢な英語で口汚く罵る鼓。そしてはっとして遼介を振り返った。遼介は鼓と目が合うと首を傾げ、ん?と少し微笑んだ。彼は気にとめていないようだった。 猫を被っている訳では無いが、自分の恋人にはやはりよく見せたい気持ちが鼓にもある。 言い訳しようと口を開いても言い淀んだ不明瞭な言葉しか出ない。 「あ、の」 「つーくん、英語上手だよね」 そう言われてしまうと、何も返せない。鼓は小さく頷いた。 「……はい。スラングは特に上手いと自負しています」 「うん」 眠気は飛んだ。 回想の時間だ。 遼介はベッドに座り直し、ぽんぽんと自分の膝を叩いた。がしかし鼓は普通に横に座った。不服そうな顔をする遼介。 「そこは座ろうよ」 「真剣な話するのに膝はちょっと」 「真剣な話だからこそ抱きしめて安心させてあげようと「遼介絶対イタズラしますよね?」……ばれたか、じゃあ仕方ない」 でもせめてて手は繋がせてねと遼介は鼓の手を握った。遼介の体温がいつもより少し暖かく感じ、けれどそれは自分が緊張して手が冷たくなっていただけなのだと気付かされた。 ぎゅっと握り返すと、彼も握り返す。 「……俺、小さい頃――」

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