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喧嘩するほど仲がいいなんてことはない 5
泣きじゃくる鼓を抱っこして、遼介はベッドに横になった。泣き疲れた鼓がいつでも寝れるようにと。ついでに背中をぽんぽんと叩く。
ようやく落ち着いてきて鼓の瞼が落ちそうになってきた頃、遼介は少しつまらなさそうに口を開いた。
「でも鼓の初恋相手のそいつは許せないな」
鼓は語る中で、清のことを好きだったとは一言も言っていない。遼介が妬くことが目に見えていたからだ。だから遠回しに刷り込み、という形で伝えたはずだが…無意味だったようだ。遼介には通じない。
「隠し事も多そうだし」
「ひぐ…ふぇ?」
「鼓、今の声いいね録音したいもう一回!!!」
「うるひゃい、つづきはやく!」
べしべしと遼介が叩かれる。痛い痛いと言いつつも幸せそうな顔だ。
しかし次の瞬間には緩んだ頬を引き締めて真面目な顔になった。
「…お母さんの態度からして鼓を愛していないなんて急に言うかな。死亡届まで出して…そいつ、鼓欲しさに嘘ついたとか考えられない?」
「っそ、れは」
(確かに、母さんのことについては考えたことあったけど…調べようがなかったし)
鼓に調べる手だてはなかった。清によって軟禁され、与えられるものは全て彼の手を通しており、母親の情報もほぼ聞かされることは無かった。
耳に入るのは当たり障りのない話ばかり。鼓もそのうち、聞くのをやめてしまった。
考えたくなかっただけかもしれないが…。
「……」
「お父さんとそいつの話をした事は?」
「ない…ううん、あるけど答えてもらえなかった」
(清さんがどうなったのか、1~2回父さんに聞いたことはある。でも父さんはその話をすると露骨に嫌な顔をしたし、俺も置いて行かれたって気持ちが強かったからそれ以上追及しなかったし…)
「でも、あんまり聞きたくない…」
「それは…鼓が未だにそいつのことを好きだから?」
「いえ全然全くこれっぽっちもそんな気持ちありませんつか今会ったらむしろ殴ります二度と俺の前に現れようなんて思えないほど手酷く振ってやりますよ」
「…おお、さすが俺のつーくん」
一瞬不穏なオーラを見せた遼介だが鼓の100点満点の答えを聞いてそれをしまった。
「……聞かなきゃ、ですかね」
「つーくんがそれを聞いて壊れてしまうくらいなら聞かなくていいと思う」
「う、ん…」
「でもお母さんのことは知りたいんじゃない?」
「…」
鼓は目を彷徨わせたあと、小さく頷いた。
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