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もしも君を愛せたら 2

「だっ、て、弟が生まれて安定してるって…」 「それは吉田清本人から聞いたのか?」 ぐ、と鼓は言葉を詰まらせる。確かに、清本人から直接は聞いていない。ただ、たまに清が話す「今日は弟と食事を作っていた」「遊園地に行った」などの話を聞いて精神的には安定してると推測しただけだ。 「そもそも…鼓、お前に弟は居ない」 「は、え、はぁ?あんた頭おかしくなった?」 「鼓くん落ち着こ…」 「遼介その鼓くんって呼び方ゾワッてするからやめて」 「あ、はいすみませんつーくん」 気迫に押された遼介はすっと前線から下がった。 「弟がいないって…そんなわけないだろ」 「事実だ。眞白は子供は産んでいない。吉田清もそれを承知していたはずだ」 鼓はとうとう頭を抱えた。 (何が本当で何が嘘なのか全部分からなくなってきた。母さんは弟が出来たって嘘をついたし、清さんはそんな母さんの状態を知ってて俺に嘘の報告してたし) 「……眞白はおまえを産んでから、子供ができない体になった」 また驚愕の事実を知らされ、鼓は何故自分の父親はこんなにも喋りにくいのだろうと痛むこめかみを押さえた。そうしたところで頭痛が消える訳では無いが。 「頼むからちょっと情報整理させろよ…もしくは一括で全て言え!」 「ワタシと眞白は一方通行の愛だった。眞白はお前を心から愛している。眞白はお前が出来てから子供を産むことが出来なくなっているためお前に弟は居ない。眞白は吉田清を刺した。吉田清は全ての発端であり、あいつは未だにお前を探している。死亡届を出したのは眞白の意思ではない。ワタシはお前を愛している」 「いや、バカ正直に言えとは言ってな………………ごめん最後の方なんて?」 「ワタシはお前を愛している」 きもちわる…と鼓はぼそっと呟いた。聞きてぇのそこじゃねえしと粟立つ腕を擦る。それを遼介は寒いと勘違いしたのか、自身のカーディガンを被せてくれた。 「ありがとう遼介…」 (寒くないけど今はその優しさが嬉しい…)

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