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もしも君を愛せたら 3

完全に口を閉ざしてしまった鼓に代わり、今度は遼介が質疑応答を始める。 「その…鼓のお母さんは、鼓の死亡届の提出を許諾していないという話でしたが…」 「君はどこまで知っている」 「…………ある程度調べたのと、あとは昨日鼓が話してくれました。戸籍の件で吉田という人物が出てきたことに驚いています。調べても…母親が鼓の死亡届を出したくらいしか出てこなかったので。これも推測の域でしたが」 「吉田に関しては特に厳重にしておいたからな。忌々しい…。初めから話そう。あの日、鼓が階段から落ちて強く頭を打ったあと、眞白は我に返ったんだ。私は誰のためにこんなことをしているんだろう、と」 膝に肘を乗せ、メガネが汚れるのも厭わず顔を覆っていた鼓。その言葉を聞いて、ぴくり、と肩を動かした。 「鼓のためと言いながら鼓が死んでは意味ないということに気づいたらしい」 「……今更」 「それは本人も言っていた」 父さんと母さん、会うようになったんだねという言葉は飲み込まれた。 (今は、話の続きが聞きたい) 「しかし、そこに吉田が割り込んだ。自分の病院に連れていくという名分で鼓を連れ出し、眞白と引き剥がした。恐らく吉田の作戦だったんだろう。壊れかけだった眞白を手中に引き込み、鼓に怪我をさせ、手に入れる。いつから吉田が鼓を気に入っていたのかは定かでは無いが、…ほんとタチの悪い」 「鼓の話だと吉田はたまに眞白さんの所に帰っていたと」 それも嘘だ、とジャンが言う。 「吉田は鼓を病院に監禁してからは1度も、眞白に会っていない。吉田は眞白が想像妊娠していると医者ながらに知っていたからだ」 「っ……クソだ」 何も言えなくなってしまった鼓に代わり、遼介が口汚く罵った。 「だが1度だけ帰ったことがある。それが鼓を親戚に預けた日だ」 「……吉田を刺したんですね」 「ああ。眞白は友達やオーケストラ仲間に吉田清という医者はいないかと聞き回ったらしい。しかしその頃には…もう既に仲間との縁も切れており、誰も相手にしなかった。そしてついに落ち着いた様子で吉田を呼び出し…半狂乱になって、鼓を返してと叫びながら吉田を包丁で刺したんだ」 事実を聞き、誰もそれ以上口を開くことは無かった。空気が重い。特に鼓は身動ぎ1つしなくなった。 (だから、迎えに来れなかったんだ。そうだったんだ、じゃああの人は俺を裏切ってなかったんだ…………なんて思えるはずねぇだろクソが。結局あの人も俺の身を案じてじゃない、自分が欲しかっただけなんだ) 鼓はゆっくり深呼吸を重ねる。頭の混乱は落ち着きつつあったが、情緒が不安定になってしまった。自分は誰を恨めばいいのか、誰に言葉をぶつけるべきなのか、分からない。

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