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もしも君を愛せたら 4

色んな考えが頭の中をグチャグチャにして、爆発した結果。鼓はぽてん、と遼介の膝に倒れ込んだ。遼介は雷に打たれたように一瞬飛び上がったあと、固まった。 鼓が膝に来てくれた喜びと自分を頼ってくれた嬉しさと行動の可愛さに発狂しそうなのと…ジャンからの視線が痛い。 遼介は思わず俺死ぬかもと呟いた。 「え、死なないで遼介。悲しい」 「うん、死なない。たぶん」 「……大丈夫?」 誰のせいで死にそうになっていると思っているのか。 その状態で鼓はジャンと話し出した。ジャンは鼓を見つつ、たまに遼介を睨みつけている。 「……とりあえず、うん、清さんが原因ってことは分かった。それで、父さんが夏休み中に俺を呼んだ理由って母さんと会えって事でいいの」 ジャンが鷹揚に頷いた。 (どおりで今年は帰ってこいとしつこいはずだよ……てか、自分はいないから大丈夫だって言ってたけど、もしかして自分がいないうちに母さんを家にあげて俺と会わせる気だった?説明も何もなしに?やっぱこいつ嫌い) 父親を睨む鼓が何を言いたいのか遼介はなんとなく理解出来たが、ジャンは分からずじまい。そもそもこの2人、会話が足りない。お互いに「言わなくてもわかるだろ」という状態で生きてきており、しかしそれでは通じるはずがないのだ。 けれども遼介がそれを言えるはずもなく、あとでそっと鼓に伝えようと決意する。 鼓も答えが出たようで、口を開いた。 「……会う。俺も今の気持ちに決着つけたいし」 「分かった、伝えておく。ああ、あとそれから、眞白はお前が最近まで生きていることを知らなかったからな」 さらなる爆弾発言。鼓はまさしく鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして言葉に表せない素頓狂な声を出した。 「眞白は吉田清に『鼓は治療中に亡くなった』と聞かされている。だからそもそも、眞白は死亡届に関わっていない」 だから安心して母親に会え、とそう言いたいのか。ジャンのこれは恐らく親切心で言ったことであろうが、鼓はいい加減にしてくれよと深い深いため息をついた。 安心できる要素がない。死んだと思ってた息子が生きてますよーと最近になって知り、取り乱し、会いたい!と叫んだのだろう。それはこれまでの事を謝りたいとかそういう物ではなく、ただの確認行為だ。 「もう嫌だ…父さん最悪。清さんも最悪…つーか清さんに至っては何してくれてんの」 「……吉田清は、つーくんが欲しくなったんだろうね。気持ちは分からなくはないよ。俺も、つーくんと一緒に居れるなら何でもすると思う。まあ、…この吉田清って奴はやりすぎだけどね」 その話に鼓は緩く首を振った。2人は全く違う、と。 「……………遼介は…根本的に、清さんとは違う。あの人は俺から何もかも奪って俺を手懐けようとした。遼介は俺に全て与えた上で愛してるって言ってくれる。全然違う」

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