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夏祭り 1
鼓の言葉に遼介は一言、うんとだけ言った。
ある程度のことを知ることができ、鼓はすこしスッキリとした面持ちになった。まだもやもやとした心の部分は晴れることはないが、それでも何も知らず全てを嫌悪していた時より断然マシだ。
「知りたいのは、これだけ」
「わかった。眞白はいつでもいいから会いたいと言っているが、どうする」
「………すぐには会いたくない」
「すこし、時間を空けよう」
鼓は頷き、遼介の腹の方を向いた。遼介としては歓喜極まりない状態だが、ジャンの視線が冷たい。
それはどう見ても挨拶に来た彼氏を睨む父親の目付きだ。これはもしかして…と遼介は質問することにした。
「ちょっとお伺いしたいのですが」
「……なんだ」
ジャンの声が低い。遼介はかなりのプレッシャーを感じていた。
「もしかして、ルイスさんは…鼓大好きでは?」
「?!」
何言ってんの遼介と鼓が叫ぼうとしたところ、遼介がそっと口を塞いできたため不発に終わった。
「先程、そう言ったはずだが」
「鼓、さっきこう言ってましたよ。『自分は父親にとって汚点だから公表しなかったんだ』と」
ぽかん、とまさに言葉通りにジャンは口を開けた。その顔はたまに鼓がする呆気に取られた顔とよく似ていた。
ジャンは天井を仰ぎ見て眉間の辺りを指で押さえた。
「……はぁ」
「なんだよそのため息!!」
顔は遼介の方を向けたまま、鼓が言う。今更ながらその体制でいいのか。
「だって…母さんは父さんのこと口に出すとすっごく機嫌悪くなるし…そんなのされたら聞くに聞けないじゃん。……俺の存在を世間から隠したのは、自分の息子だって認めたくなったからじゃないの?」
「世間に公表しなかったのは、普通の生活をして欲しかったからだ。先程話した通り、ワタシは小さい頃から英才教育を受け権力の醜さを知っていた。そんな世界に自分の可愛い息子を入れるわけが無いだろ」
「……え、かわ…なな、なにいってるの」
さすがの鼓も起き上がって、不気味なのを見るかのような目で父親を見つめた。ジャンの表情は変わらず、無表情だ。
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