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夏祭り 4

遼介はさっそくジャンに呉服屋と着付け師を呼ぶ許可を貰うと、すぐに電話をどこかにかけ始めた。 1時間もしないうちに数人の男女が家に訪れ、色とりどりな浴衣をテーブルに広げ始めた。 「こちらの色など、涼川様の肌のお色に合うかと」 「うん、たしかに。こっちの色はどうかな」 「お目が高い。こちら生地的にも涼しく…」 自分の着る浴衣なのに何故か自動的に決まっていく。鼓は着せ替え人形状態で遠い目をするしかなかった。 そうして数十着あった浴衣の中から藍色に白の紗綾型柄の浴衣と、白に紫がかった百合の花が入った柄の浴衣の2つに絞られた。前半は男性ものだが、後半は女性ものである。藍色の浴衣は鼓の白い肌がよく映え、白色の浴衣は鼓の黒髪と対照的できれいだ。 しかし鼓は気に入らない。 「俺、男」 「うん、知ってるよ。つーくん意外と男気あるし」 「じゃあなんで女物の浴衣も候補に挙がってるの」 「似合うから」 「ぜっっったい着ない」 「別に女装しろって言ってるわけじゃないんだし、ね?お願いします」 「いーやーだ!」 駄々をこねる(この表現も鼓は気に入らないだろう)鼓に、遼介は諦め「買います」とだけ言った。これは諦めていないことを鼓は知っていたが、とりあえずこの場では着させられることはないのだろう、と安堵した。 その後、鼓は紗綾型柄を着ることになり、遼介も同じ柄の黒字を選んで着た。 (色違い…的な) 心の中でひっそり喜んでいると、遼介がにっこりと笑って色違いおそろだねと言ってきた。心の中で通じ合えてうれしい、と鼓は一瞬思ったものの、いつものことじゃない?と思い直した。遼介はたまにテレパシーを使うことがあると鼓は信じている。 着物を選んでいる間に時間が結構経っていたのか、いつの間にか窓の外は夕闇に塗られていた。そろそろ祭りにでかけようかと玄関先で下駄をひっかけている最中、鼓はふと思い出したように口を開いた。 「あ、遼介、浴衣のお金払います」 「いいよ大丈夫。…それに彼氏の服も買えないのかってお義父さんに怒られそうだから」 「…ありがとうございます」 ありえなくはなさそうだと思い、今回は遼介に頼ることにした。

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