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夏祭り 6

少しして回復した鼓は遼介から離れたが、Hしよって言ったの気分紛らそうとしたのもあるけど本心だから、と遼介に耳打ちされてしまう。慌てて鼓は遼介から距離を取るも、遼介はにこやかに笑っている。 「今日の夜、ね」 顔が真っ赤になる鼓。屋台と屋台の隙間から少し出る形になっていると、遼介がそこ危ないよと腕を引っ張ってきた。鼓がぱっとまた距離を取る。 「い、行きましょう…」 「いやーたのしみだなぁ」 「お祭り楽しいですね!!」 話が食い違っていると知りつつも鼓は話を戻そうとしない。 二人は恋人同士である。遼介が鼓を抱きたいと思っていることは鼓自身がよくわかっていた。しかし、そういう関係にならなくてもいいんじゃないかと鼓自身どこかでそう思ってしまっていた。けれど違う。遼介はたしかに鼓をまだ抱きたいと考えていることをしっかり感じ取った。 (だめ、だよね…。だって、よくよく考えたら遼介ずっと我慢してくれてるし…) 鼓をストーカーする前の遼介の行動は、なんとなく聞いている。いろんな男子学生を抱いて、ひどく荒んだ生活をしていた、と。どうしてそうなったのかまでは知らないけど、性に奔放になるくらいの出来事があったのだろうと推し量っている。その遼介がこれだけの期間我慢してくれていることに感謝しなければならない。 (いやでもだってそうだとしてもでも、でも、でも) 頭の中をいろんな考えがぐるぐるする。そして、思考がストップする。 「お祭り楽しみましょう!」 「あ。つーくんいま思考放棄したね」 「遼介!千本引きなんてありますよ!」 鼓の指さす先には大量の糸が垂れ下がった屋台があった。当たらないと噂の、あれである。 「運試ししませんか!」 「いいけど、当たらないと思うよ?」 「物は試しです!」 鼓はすたたと屋台まで歩いていき、1回引きますと千円札を差し出した。おじさんがそれを受け取り好きなのを引きなと声をかける。ぺこりとお辞儀をしてぐっと一本引けば、手前側のおかし詰め合わせセットが持ち上がった。 「わーいお菓子」 鼓にとっては貴重な食料源のため喜んで受け取る。鼓が軽く中身を確認したところ、中身はポテチや飴、チョコだった。 「じゃあ俺も1回お願いします」 遼介も同じように千円札を取り出し、ひもを一本引く。するとガランと音がして奥にあったゲーム機の箱が持ち上がった。 「「えっ」」 遼介も鼓も驚いて声を上げる。 「お~!おめでとう!一等のゲーム機だ」 (こ、こういうのって当たるんだ。空箱だけ置いておいて無駄引きさせるのが常套句だと思ってた) 思わず遼介に感想を言いそうになったが、すんでのところで飲み込んだ。さすがに店主の前でそれを言うのは命知らずということは知っているらしい。

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