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そんな顔しなくてもまた来るよ 3
(遼介の土下座見るの2回目だなー)
そんな呑気なことを鼓は思っていた。
目が覚めた時、鼓は上下共に服を身につけていた。きっと遼介が着せてくれたのだろうと思う。問題はその遼介がテーブルの向こう側で背の高いジャンに向かって土下座をしていたことだ。
「…父さん、何してるの」
「おはよう鼓。体調はどうだ」
「……それ、今の俺に聞く?全部知ってるんでしょ」
「さすがに押し倒された辺りから監視カメラは消した」
「ああ、そう…って、結局知ってるんじゃん。変態。監視カメラ外せ」
「…わかった」
「で、なにしてるの」
この間遼介は無言で土下座を続けていた。セミが外で鳴き、部屋は涼しい中、遼介は冷や汗をかいてるようにみえる。
鼓は何かを察し布団からするりと抜け、何とか立ち上がると遼介の元に寄った。
「遼介、こいつに頭下げる必要ないから」
「いや、いやぁ…ほら、でも、つーくんのお父さんなわけだし…ね」
「足腰が立たなくなるまでするとはいい度胸だな」
「申し訳ありません!」
「謝る必要ないって…俺も、別に、いやだった、わけ、じゃ、な…」
徐々に鼓の顔が赤くなる。最後まで言いきれなかった鼓は、苛立ちを紛らわすようにジャンの脛を殴った。
ジャンもさすがに脛は弱かったのか、蹲って呻く。
「もういいでしょ父さん」
「まあ…いいだろう…痛いな」
(少し呻いてればいい)
ぷい、と鼓は父親から目を逸らした。そしてそのまま遼介の肩に手を置いて顔を挙げさせる。額が少し赤くなっていた。
髪を退けてよしよし、と赤くなった部分を撫でる。
「ありがとうつーくん…」
若干疲れた顔をしている遼介にどれほど長い間土下座させられていたのだろう、と思いやる。
(バカ親父)
もう1回殴ってやろうかと思い振り向くが、まだそこにジャンが蹲っていたためやめた。さすがに可哀想に感じたためだ。
鼓は遼介を立ち上がらせると先程まで寝ていたソファーまで手を引いて戻り遼介を座らせた。
「父さん、なんで帰ってきたの?」
「ここは私の家でもあるのだが」
「……まあ、たしかに」
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