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そんな顔しなくてもまた来るよ 9

(ある一時から中学の先生がよく話しかけてきてたのは、もしかしてカメラから視線をそらさせるため…?こ、このすとーかーは!!) べちん、と遼介の腕を叩く。しかし遼介は気にした風もなく笑って鼓を―抱きしめた。 「その時の俺にとって、つーくんは闇の中の光だったんだよ。何も無い暗い部屋の中にある、唯一光が溢れ出る扉…そんな感じ」 「……なる、ほど?」 わかるような、わからないような。首を傾げていると、遼介がさらにぎゅむぎゅむと鼓を抱きしめてきた。 苦しいほどの抱擁に鼓は遼介を押し返す。 「それで…いままでストーカー行為をしていたと?」 「そうです。俺の高校に入るってわかった時はどれだけ嬉しかったか…毎日写真じゃないつーくんを見て、持ってるもの盗、貰って、飾って眺めて…本当に最高です。今ではそれが堂々と出来ますしなんなら本人から供給もあるんで日々幸せです。…息子さんにはすみません」 「まあ、鼓がそれを受けているならワタシは何も言うまい…」 ジャンが鼓を見る。鼓は未だ抱きしめてきてる遼介を逆に抱きしめ、にぱっと笑った。 「うん、受け入れてるよ。俺だけの、すとーかー様だもん」 (俺だけの、大好きで…愛おしいすとーかー様) 「そうか。ならいい」 遼介の話と鼓の回答に満足したのかそう言って席を立った。 「ワタシは部屋でまた仕事をしている。用があったらドアを叩きなさい」 「うん、わかった…」 部屋を出ようとするジャンに、鼓はあ!父さん!と声をかけた。 「なんだ?」 「……夏休みの終わり、母さんに会う。それだけ」 「……ありがとう、わかった」 ジャンは鼓の頭にぽんと手を一瞬乗せると踵を返し部屋を出て行った。 それからの夏休みは非常に楽しいものだった。BBQをしたり、花火をしたり、かき氷機を買ってかき氷を作ったり、映画を1日に5本見たり、また祭りに行ったり…夏休みを満喫した。 時々鼓はヴァイオリンを弾いて遼介を感動させることもある。 もちろん2人は宿題を忘れることも無かった。 そうして、夏休みの終わり。

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