8 / 22
第8話 意外な一面
真夜中の3時だというのにその病室は人で溢れ、
皆、満面の笑みを浮かべていた。
皆の注目の的は、生まれたばかりの我が子を
胸に抱き柔らかく微笑んでいる、
エレン(ネル)とそのパートナー・ステファニー
(ステフ)がいた。
女性同士のレズビアンカップルだ。
(注略:アメリカの最高裁で同性婚が合憲だという
判決が下されたのは、2015年6月26日)
息せき切って現れた柊らに一同は道を空けた。
初めて、我が子
(と言っても、精子を提供しただけだが)
との対面に相好を崩す柊。
『フフフ……女の子よ。ど~お? 抱いてみる?』
『いい、のか?』
ネルからそうっと赤ん坊を差し出された柊に、
すかさずステフが忠告する。
『落とさないでよ』
『分かってるよ……わぉ、軽いなぁ……ハ~イ、
お前のパパだぞー』
赤ん坊を自分の腕に柊が抱いた瞬間を、
松浪がカメラでパチリ。
『―― 2800グラム。初産の割りには安産
だったって』
『で、名前は?』
『ん~ ―― 私はおばあちゃんからもらって
”キャサリン”がいいって言ったんだけど。
ステフは”マーガレット”がいいって』
『キャスにマギーかぁ ―― 両方いい感じだな……
おーいプリンセス、お前はどっちがいい?』
そうやって我が子を見つめる柊の表情は
慈愛と温かさに満ちていた……。
*** *** ***
赤ん坊と出産直後の母親を気遣って、
早々に病室を後にした柊・ジェイク・松浪の
3人は同じ道を辿って帰路につく。
但し、今度の運転役は松浪で。
柊とジェイクは2人仲良く後部座席に落ち着き、
まるで松浪へ魅せつけるようイチャイチャ ――。
松浪は憮然とした表情で、
フロントグラス越しに柊を見ながら。
「あー、キミ、ジョン、って言ったっけ?」
「ジェイクだ」
「**辺りで落とすけど ――」
「落とすってなんだよ~。もちろんジェイクはオレと
一緒に帰るよなー?」
「……う、うん」
「ほ~らな。だから、まっすぐオレのアパートに
行ってくれ」
「オレはお前らのドライバーじゃねぇぞ」
松浪の小言も何のその、柊はジェイクにキスをして
ゆっくりその顔を下部へ。
松浪は”?@!”と我が目を疑う。
布ズレ音が微かにして、
ジェイクが小さく甘い声を漏らす。
「慎之介……っ、てめぇ、いい加減にしろよ……」
『フフフ……この、ヤキモチ焼きぃ』
ジェイクの股間に顔を伏せた柊が
何をやっているか?
は、読者の皆さんのご想像にお任せ致します。
「…………」
ともだちにシェアしよう!