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第17話 告白 4-1

 そして案の定、思考停止していた時間の分だけ仕事に追われ、すっかり陽も暮れてしまった帰り道。僕はいつもとは違う、一つ手前のバス停を降り一人歩いていた。 「静かだな、ここは」  一本向こうの道へ行けば、忙しなく車が行き交う繁華街がある。けれどいま歩いている道は、音が建物に吸収されたかのように静かだった。  ほんの少し表通りから内に入るだけで、明るさや騒音がこんなにも違うのかと驚く。そして足を止めたその場所で上を大きく振り仰いで見れば、柔らかいライトアップの中で粛々とした佇まいを見せながらも、大きな存在感を見るものに与える建物がそびえていた。 「ん、ここ。なんか見覚えがあるぞ」  その建物の名は――ホテル・シャルール。それは全国でも屈指の高級ホテルだった。 「あ、姉さんの結婚式か」  ぼんやりした記憶を掘り起こせば、何年か前に姉の結婚式で訪れたことを思い出した。ここはホテルに併設された立派なチャペルがあるのだ。 「それにしてもなぜここ?」  首を傾げながら手元に視線を落とす。片平が残した名刺の地図を頼りに、たどり着いたのがここなのだ。 「タン・カルムってレストランはホテルの中にあるお店なのか」

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