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第22話 告白 4-6
慌てて首を左右に振った僕を見て、藤堂は一瞬だけ目を細めてからにっこりと微笑む。その笑みにカッと頬が熱くなった。いくらなんでも意識し過ぎだよなこれは、些細なことで過剰に反応し過ぎだ。
腰を屈め、僕の顔を覗き込もうとする藤堂から必死で逃れながら、僕は小さく息をついた。
「先生いつもこんな時間に帰るんですか?」
「え? あ、いや今日は少し遅い、かな」
お前のこと考え過ぎて残業をして、しかもここに来るためにわざわざ遠回りしてきたとは言えない。
「そうですか」
「なんだ?」
「また今日みたいに時間が合う日があるかと思ったんですけど。難しいですか?」
「あ、ああ、どうだろう」
曖昧に言葉を濁すと藤堂はじっとこちらを見つめ、ふいに思い立ったように肩にかけた鞄からなにかを取り出す。
「アドレスとか番号を教えてくださいって言ったら怒ります?」
鞄から取り出された携帯電話を開き、藤堂はこちらを窺うように小さく首を傾げる。
「う、うーん」
そんなに寂しそうな目で見るな。
ほんの少し眼鏡の奥にある藤堂の瞳が不安そうに揺れて、不覚にも胸の辺りがぎゅうと締めつけられ、心苦しくなってしまった。
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