27 / 1096

第27話 告白 5-5

 罠を仕掛けられなくても、うっかりどこかに引っかかってしまいそうだ。やはりそれくらいの魅力を藤堂は持っている。ちっとも胸のもやもやを解消しきれぬまま、大きなため息と共に重い足取りで、僕は駅へと歩き出した。 「それにしても藤堂ってなんだか、放っておけない雰囲気があるよな。あんなにしっかりした感じなのになんでだろうか」  藤堂と歩いた駅までの一本道。それはほんの二十分程度の時間だった。けれど二人並んで歩いたそんな時間は、それ以上に藤堂という人間を強く印象づけてくれた気がした。  優しく綺麗に浮かべる笑みがすごく温かくて、ほんの些細なことさえも気にかけてくれる心配性。そんな彼は触れることで安心するのか、すぐに手や髪を触りたがる。そしてその触れる手は大きくて優しい。  けれどいつでも気持ちにまっすぐな彼の行動に、こっちは慌てふためき動悸がひどくてたまらない。最近じゃ恋愛偏差値ゼロに等しかったのに、急にこんなテンションのアップダウンは身体に悪い。  でも悔しいことに彼のすることなすこと、嫌悪するどころかまったく悪い気がしない。  ――今日は先生に会えて嬉しかったです。おやすみなさい  初めて届いた藤堂からのメール。なんてことはない、たったそれだけの一文にさえも僕はひどく動揺し、もたれた電車のドアで額を打った。久しぶりに高揚し、脈打つ心臓が自分のものではない気さえした。  少し前までほとんど知りもしなかった相手に、こんな風に感じるのは初めてだった。

ともだちにシェアしよう!