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第27話 告白 5-5
罠を仕掛けられなくても、うっかりどこかに引っかかってしまいそうだ。やはりそれくらいの魅力を藤堂は持っている。ちっとも胸のもやもやを解消しきれぬまま、大きなため息と共に重い足取りで、僕は駅へと歩き出した。
「それにしても藤堂ってなんだか、放っておけない雰囲気があるよな。あんなにしっかりした感じなのになんでだろうか」
藤堂と歩いた駅までの一本道。それはほんの二十分程度の時間だった。けれど二人並んで歩いたそんな時間は、それ以上に藤堂という人間を強く印象づけてくれた気がした。
優しく綺麗に浮かべる笑みがすごく温かくて、ほんの些細なことさえも気にかけてくれる心配性。そんな彼は触れることで安心するのか、すぐに手や髪を触りたがる。そしてその触れる手は大きくて優しい。
けれどいつでも気持ちにまっすぐな彼の行動に、こっちは慌てふためき動悸がひどくてたまらない。最近じゃ恋愛偏差値ゼロに等しかったのに、急にこんなテンションのアップダウンは身体に悪い。
でも悔しいことに彼のすることなすこと、嫌悪するどころかまったく悪い気がしない。
――今日は先生に会えて嬉しかったです。おやすみなさい
初めて届いた藤堂からのメール。なんてことはない、たったそれだけの一文にさえも僕はひどく動揺し、もたれた電車のドアで額を打った。久しぶりに高揚し、脈打つ心臓が自分のものではない気さえした。
少し前までほとんど知りもしなかった相手に、こんな風に感じるのは初めてだった。
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