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第28話 告白 5-6
そしてそんな彼がなぜかいま、また僕の目の前でにこやかに笑っている。ここは僕が一日の大半をすごす教科準備室だ。訪ねてくる生徒も少ない辺境な場所にあるのだが。
昼のチャイムが鳴ってしばらくすると、彼は昨日と変わらぬ優しい笑みを浮かべここに現れた。しかし昨日の今日で、こんなに早く会うことになるとは思わず正直、僕は面食らってしまう。
「先生、好き嫌いとかありますか?」
「いや、ない」
「玉子焼きは甘いのとしょっぱいのどっちが好き?」
「うーん、甘いの?」
机に向かいプリントの採点をしている横で、藤堂は満面の笑みで僕の顔を眺めている。長い足を優雅に組み、頬杖をつく様はいささか薄暗いこの部屋の中で眩しいほどだ。
「で、なんの質問」
先ほどから延々と食べ物の好みを聞かれている。さすがに気になり藤堂の顔を見ると、ほんの少し驚いたように瞬きをした。
「先生の食への質問です」
「いや、さすがにそれはわかるけど」
なんの躊躇いもなくそう答えた藤堂に戸惑いながら、思わず眉を寄せればふいに藤堂は立ち上がる。
「先生がこんな食生活だとは知らなかったので」
藤堂の腕が伸び、机の上に転がった箱を掴む。振るとカタカタと鳴るそれはお手軽な固形栄養食だった。
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